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勝ちの可能性

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 スキル『風読み』に全ての集中力を注ぎ込む。
 しかし、スキル『風読み』だけではこれまでと状況は変わらない。わかっているのはスキルの及ぶ範囲にミミーがいないということだけだ。
 読んで字の如く、風の動きを読むスキル『風読み』は効果範囲内に何があるのか手に取るようにわかる。夜の闇に紛れていようが、草木に隠れていようが問題ない。

「私のスキル『風読み』の範囲は歩数にして百歩程度」

 約百メートルだ。これは半径の話である。

「その中にミミーがいないってことだけは確定してる。草木で身を隠していようが、スキル『風読み』から逃れることはできないもの」

 魔物の中には木に擬態する種類もいる。目視で確認しても木にしか見えない魔物だろうと、リオネが見逃すことはない。
 そんなリオネが居場所を掴めていないのだから、半径百メートルにミミーがいないことは確定していいだろう。
 せめてミミーの居る方向さえわかれば、スキル『風読み』の範囲に入る程度まで近寄ることができる。それも叶わない状況で、どうすればいいのか。

「けど、ミミーは移動を続けてる・・・・・・もう少しスキルの範囲が広がれば・・・・・・風の範囲が・・・・・・そうだ、風よ」

 そこでリオネは一種の賭けを思いつく。それは大きな賭けだ。
 もしも成功すればミミーの居場所がわかる。しかし、成功しようが失敗しようが自分を危険に晒す。これは明らかに期待値の低い賭けだ。
 
「それでも・・・・・・それでも、何もしないまま負けるよりはマシ。危険なのはもとより承知の上だもの。ここは戦場よ・・・・・・危険を避けるなんて、できるはずもない。だったら、ありったけの危険を犯すしかない。私は、私の命を賭けに使う」

 言葉にすることで、自分の怯えを捨て勇気を振り絞るリオネ。
 彼女が思いついた賭けとは、スキルと魔法の組み合わせだ。
 風の動きを読むスキル『風読み』の感覚を風魔法に乗せて広げれば、スキルの範囲が広がるのではないか、という賭け。
 しかし、風魔法と組み合わせればどうしても魔力も広がる。ミミーほどの傭兵であれば魔力の流れを読むことできるはずだ。そうなれば、リオネの居場所を簡単に特定することができる。
 もちろん、今も居場所を特定されてはいるのだが、危険はそれだけではない。
 リオネの魔力量や魔法の種類、何のために魔力を広げているのかを考えれば、スキルの種類やその範囲まで導き出すことができる。
 文字通り、手の内を全て晒すことになるのだ。
 だが、リオネは危険を選ぶ。安全に負けていくのであれば、危険に勝ちを。いや、勝ちの可能性を掴みにいく。そう決めたのだ。
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