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終わりと呪い
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どこまでも意見の合わない二人。
もしかすると数十年前のレオポルトと今のダズウェルならば話が、肩を組めたかもしれない。だが、レオポルトは既に強さだけを求める場所からは脱していた。
強さという鎖のような呪いから解き放たれ、更に難解な平和という実態も掴めぬ理想に振り回されている。
「ああ、理想論だ。平和や正義、平等が全ての者に行き渡ることなどないかもしれん。誰かにとっての正義や平和は、誰かにとっての悪であり不和だ。それでも人が命を懸けるのならば理想を追わんでどうする。お前さんが強さを求めるために手段を選ばなかったのと同じだ。理想が行動を支える力となる。どれだけ笑われようとワシは誰もが笑える世界を目指す。そうだな・・・・・・『ヤツ』が諦めん内はな」
「ヤツ・・・・・・仲間の話か。下らん」
最後の最後までレオポルトの話を受け入れようとしないダズウェル。彼には彼なりの矜持が感じられた。
一度『強さだけ』を求めると決めた時から、その他の全てを捨てたのだろう。腹部から胸部を裂かれ、大量に出血し体中の力が抜け落ちた今でも、捨ててきたものを惜しむわけにはいかない。
強さを追い求めた結果がどうであれ受け入れるしかないのである。
ダズウェルはとうとう上半身にすら力が入らず、うつ伏せに倒れ込んだ。レオポルトはそんな彼に近付くと膝を着いて、戦いの最中ずっと抱いていた疑問を投げかける。
「お前さんにとっては最期の時間だろうが、ワシにとってはまだ続く戦いの途中だ。お前さんがワシの名前を知っていた理由を話してもらおう」
するとダズウェルは唇を地面に擦りながら、笑みを浮かべた。
「はっ、この状況の吾輩に尋問とはな。何が平和だ・・・・・・随分と血生臭いぞ、レオポルト・ダッセル」
「何とでも言え。ワシはワシの役目を全うせねばならん。手段は選ばんぞ・・・・・・ダズウェル。既に、平和という理想を掲げながら手を汚す矛盾を背負う覚悟はしておる。お前さんとて最期は穏やかに眠りたいだろう」
「貴様・・・・・・この状況の吾輩に脅しが通じると思っておるのか? 最早痛みなど感じぬわ」
これだけの深手を負い、血を失って意識を保っているダズウェルが特別なのだ。死を待つだけの人間に脅しが通用するはずもない。
それでもレオポルトは言葉を続ける。
「ワシはお前さんに勝ったとも思っておらんが、お前さんが負けたと思っているのならば敗者が通すべき筋があろう。ダズウェル、お前さんの矜持はそんなものか?」
「・・・・・・元よりゼット商会に雇われたのは戦いのためだ。義理などない・・・・・・だが、貴様を喜ばせる必要もない。ならば敗者らしく貴様を呪って死を受け入れよう。吾輩が・・・・・・貴様の名を知っていたのは・・・・・・聞いたからだ」
「聞いた? 誰にだ! デュワール・オレンジか? いや、このタイミングであることを奴が知るはずもない! 答えろ、ダズウェル!」
「残念・・・・・・終わりだ」
最期にそう言い残し、ダズウェルは口を閉じた。それと同時に瞼も落ちる。
もしかすると数十年前のレオポルトと今のダズウェルならば話が、肩を組めたかもしれない。だが、レオポルトは既に強さだけを求める場所からは脱していた。
強さという鎖のような呪いから解き放たれ、更に難解な平和という実態も掴めぬ理想に振り回されている。
「ああ、理想論だ。平和や正義、平等が全ての者に行き渡ることなどないかもしれん。誰かにとっての正義や平和は、誰かにとっての悪であり不和だ。それでも人が命を懸けるのならば理想を追わんでどうする。お前さんが強さを求めるために手段を選ばなかったのと同じだ。理想が行動を支える力となる。どれだけ笑われようとワシは誰もが笑える世界を目指す。そうだな・・・・・・『ヤツ』が諦めん内はな」
「ヤツ・・・・・・仲間の話か。下らん」
最後の最後までレオポルトの話を受け入れようとしないダズウェル。彼には彼なりの矜持が感じられた。
一度『強さだけ』を求めると決めた時から、その他の全てを捨てたのだろう。腹部から胸部を裂かれ、大量に出血し体中の力が抜け落ちた今でも、捨ててきたものを惜しむわけにはいかない。
強さを追い求めた結果がどうであれ受け入れるしかないのである。
ダズウェルはとうとう上半身にすら力が入らず、うつ伏せに倒れ込んだ。レオポルトはそんな彼に近付くと膝を着いて、戦いの最中ずっと抱いていた疑問を投げかける。
「お前さんにとっては最期の時間だろうが、ワシにとってはまだ続く戦いの途中だ。お前さんがワシの名前を知っていた理由を話してもらおう」
するとダズウェルは唇を地面に擦りながら、笑みを浮かべた。
「はっ、この状況の吾輩に尋問とはな。何が平和だ・・・・・・随分と血生臭いぞ、レオポルト・ダッセル」
「何とでも言え。ワシはワシの役目を全うせねばならん。手段は選ばんぞ・・・・・・ダズウェル。既に、平和という理想を掲げながら手を汚す矛盾を背負う覚悟はしておる。お前さんとて最期は穏やかに眠りたいだろう」
「貴様・・・・・・この状況の吾輩に脅しが通じると思っておるのか? 最早痛みなど感じぬわ」
これだけの深手を負い、血を失って意識を保っているダズウェルが特別なのだ。死を待つだけの人間に脅しが通用するはずもない。
それでもレオポルトは言葉を続ける。
「ワシはお前さんに勝ったとも思っておらんが、お前さんが負けたと思っているのならば敗者が通すべき筋があろう。ダズウェル、お前さんの矜持はそんなものか?」
「・・・・・・元よりゼット商会に雇われたのは戦いのためだ。義理などない・・・・・・だが、貴様を喜ばせる必要もない。ならば敗者らしく貴様を呪って死を受け入れよう。吾輩が・・・・・・貴様の名を知っていたのは・・・・・・聞いたからだ」
「聞いた? 誰にだ! デュワール・オレンジか? いや、このタイミングであることを奴が知るはずもない! 答えろ、ダズウェル!」
「残念・・・・・・終わりだ」
最期にそう言い残し、ダズウェルは口を閉じた。それと同時に瞼も落ちる。
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