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決着の華

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 ダズウェルが再び目で捉えたのは納刀するレオポルトの姿だった。
 刀を鞘に納める行為は攻撃の終了を意味している。
 涼しい顔でこちらに視線を向けるレオポルトに対して、ダズウェルは処理しきれないほどの疑問符を浮かべた。
 何が起きた。どうして消えた。何故、納刀している。何だ、その速度は。回避行動は見えなかっただろう。予備動作さえなかった。生物の動きを越えていないか。何を終えた。何をされた。
 脳を物理的に圧迫しそうなほどの問いかけに、ダズウェルは冷や汗が止まらない。
 それでもなんとか口を開いた。

「一体、何をした・・・・・・貴様は吾輩に何をした!」

 ダズウェルが叫ぶとレオポルトは静かに答える。

「あまり大きな声を出さんほうがいい。傷が開き、死期が早まるぞ」
「何を!」

 レオポルトの忠告を無視して叫ぶダズウェル。その結果、ダズウェルの右脇腹から左肩にかけて一気に痛みが走った。
 
「なっ!」

 耐え難い痛みで視線を落とすと、花火のように血液飛び散る。痛みを感じた箇所は一直線に裂け、ダズウェルの血と体中の力を溢れさせていた。
 斬られたのだ、と気づいてしまったダズウェルはその場に膝を着く。

「ぐっ・・・・・・・」

 明らかに重症であり、人体からこれほど流れ出るのか、というほど流血しているにも関わらずダズウェルは悲鳴を上げるようなことはしない。
 ただ、状況を理解し死の気配を感じ取っていた。

「負けたのか、吾輩は・・・・・・貴様に」
「最初からお前さんとワシの戦いではない。お前さんたちゼット商会とワシらの戦いだ。お前さん個人の勝ち負けなどこの戦場には存在せん。もちろん、ワシも同じだ。ワシが死んでいようが、ワシの仲間が勝てばワシも勝者の一人だ」

 誰が見ても致命傷を負っているダズウェル相手に、敗北という結果すらも与えないレオポルト。それは優しさではなく非情さなのかもしれない。
 彼は負けたという実感すら得ることができないのだ。強さと戦いに全てを懸けた男の結末としては悲劇でしかない。自分を倒した男が勝者だと名乗りを挙げないのならば、自分の人生は一体何だったのか。自分は何のために強さを追い求めたのか。

「・・・・・・吾輩に勝っておきながら・・・・・・勝ち負けはないだと。この戦いを愚弄する気か。強さを追い求めた吾輩の人生を否定するつもりか!」

 ダズウェルは言葉とともに口から血を流す。
 溢れる鮮血にさえ、静かな視線を送るレオポルト。

「ああ、はっきりさせておこう。お前さんは視野が狭すぎる。いいか、個人のみの強さに意味などない。追求すべきは世界としての強さ。確固たる平和と平等を積み上げる強さだ」
「・・・・・・誰にとっての平和と平等だ」
「誰とってもの平和と平等だ」
「ゴミのような理想論にすぎん・・・・・・個人の強さのみが、個人の追求のみが、個人のみが世界を掴む。弱者が堕落しあって手を繋ぐ平和など存在しない!」
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