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甘さ
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名前を呼んでから再びレオポルトに向かって駆けるダッセル。
その走り方は獣人のレオポルトから見ても獣的であった。おそらく、人間の動きを超えるために魔物の動きを参考にしたのだろう。
人間の動きでは到達できない地点を目指した結果、ダズウェルは爆発的な加速を手に入れた。
一瞬でレオポルトとの間合いを詰めると、拳を前に突き出す。
加速も相まって手が伸びてきたようにも感じる攻撃をギリギリのところで体を右に振って回避するレオポルト。
「速いな」
素直にその動きを称賛しながらも、レオポルトは反撃に出る。
一直線に向かってきたダズウェルの死角。その後頭部を狙って、鋭い裏拳を放った。
だが、レオポルトの裏拳は虚しく空を切る。
「何!?」
「貴様の動きは綺麗すぎる」
ダッセルはその場で瞬時にしゃがみ、レオポルトの攻撃を回避していた。
そのまま裏拳を放ったばかりで無防備なレオポルトの腹部に拳を叩き込む。
「ぐあっ!」
鍛え込んだ腹筋とはいえ、強烈なパンチを食らったレオポルトは大きく後退してしまった。
再び二人の距離が生まれたところで、ダズウェルが口を開く。
「凡人相手ならば貴様は十分に強いのだろう。それゆえに貴様の動きは読みやすい。的確に死角や弱点を突く攻撃は、なるほど確かに一流の戦い方だ。しかし、残念なことに吾輩はその上にいる。超一流の吾輩には効かんぞ、レオポルト・ダッセル!」
腹部の痛みに耐えながら、レオポルトは余裕そうに笑みを浮かべた。
「ふっ、口よりも手を動かせと言ったお前さんがよく喋るな。なんだ、他の者を落伍者と呼びながら、お前さん自身には甘いのか? 大した事ないのだな、全てを捨てて強さを求めるというのも。自分への甘さも捨てきれんとは」
そんなレオポルトの言葉はしっかりとダッセルの癇に障ったらしい。彼は眉上に血管を浮かび上がらせて、再び地面を蹴った。
「貴様が甘さを語るか!」
独特なステップで左右に移動しながらレオポルトに向かっていく。分身とまではいかずとも、高速で左右に移動されれば捉え難い。そんな動きを可能にしているのはダズウェルの鍛え込まれた肉体である。
レオポルトは拳を構えて迎え撃つ体勢で言葉を返した。
「ワシが甘さを語るのが可笑しいか?」
「女一人見捨てられず、ノコノコ敵地まで踏み込んでくる愚か者を甘いと言わず何と言う!」
「仲間一人救えずに、強さなど語れるか!」
レオポルトの叫びと同時にダズウェルが踏み込んでくる。手の届く範囲、いわゆる間合いに入った瞬間、互いに拳を叩き込んだ。
その走り方は獣人のレオポルトから見ても獣的であった。おそらく、人間の動きを超えるために魔物の動きを参考にしたのだろう。
人間の動きでは到達できない地点を目指した結果、ダズウェルは爆発的な加速を手に入れた。
一瞬でレオポルトとの間合いを詰めると、拳を前に突き出す。
加速も相まって手が伸びてきたようにも感じる攻撃をギリギリのところで体を右に振って回避するレオポルト。
「速いな」
素直にその動きを称賛しながらも、レオポルトは反撃に出る。
一直線に向かってきたダズウェルの死角。その後頭部を狙って、鋭い裏拳を放った。
だが、レオポルトの裏拳は虚しく空を切る。
「何!?」
「貴様の動きは綺麗すぎる」
ダッセルはその場で瞬時にしゃがみ、レオポルトの攻撃を回避していた。
そのまま裏拳を放ったばかりで無防備なレオポルトの腹部に拳を叩き込む。
「ぐあっ!」
鍛え込んだ腹筋とはいえ、強烈なパンチを食らったレオポルトは大きく後退してしまった。
再び二人の距離が生まれたところで、ダズウェルが口を開く。
「凡人相手ならば貴様は十分に強いのだろう。それゆえに貴様の動きは読みやすい。的確に死角や弱点を突く攻撃は、なるほど確かに一流の戦い方だ。しかし、残念なことに吾輩はその上にいる。超一流の吾輩には効かんぞ、レオポルト・ダッセル!」
腹部の痛みに耐えながら、レオポルトは余裕そうに笑みを浮かべた。
「ふっ、口よりも手を動かせと言ったお前さんがよく喋るな。なんだ、他の者を落伍者と呼びながら、お前さん自身には甘いのか? 大した事ないのだな、全てを捨てて強さを求めるというのも。自分への甘さも捨てきれんとは」
そんなレオポルトの言葉はしっかりとダッセルの癇に障ったらしい。彼は眉上に血管を浮かび上がらせて、再び地面を蹴った。
「貴様が甘さを語るか!」
独特なステップで左右に移動しながらレオポルトに向かっていく。分身とまではいかずとも、高速で左右に移動されれば捉え難い。そんな動きを可能にしているのはダズウェルの鍛え込まれた肉体である。
レオポルトは拳を構えて迎え撃つ体勢で言葉を返した。
「ワシが甘さを語るのが可笑しいか?」
「女一人見捨てられず、ノコノコ敵地まで踏み込んでくる愚か者を甘いと言わず何と言う!」
「仲間一人救えずに、強さなど語れるか!」
レオポルトの叫びと同時にダズウェルが踏み込んでくる。手の届く範囲、いわゆる間合いに入った瞬間、互いに拳を叩き込んだ。
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