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強さを求める宿命

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「視線を上に気を取られすぎだ、レオポルト・ダッセル! 肉食獣のような視界の狭さは戦いに向かんぞ。草食獣の視野を持て、獅子よ!」

 叫びながらダズウェルはまるで何かを呼ぶように両腕を振り上げる。
 するとレオポルトの足元が一気に熱を帯びた。革靴を履いていても火傷をしそうなほど熱い。
 その熱は一気に空気を押し上げ、上昇気流を生み出した。
 何が起きているのか、とレオポルトが足元を確認すると魔法陣の様なものが描かれている。

「炎熱系の魔法か!」

 気づいた頃には遅く、レオポルトの体は宙に投げ出され、放った石礫は上昇気流に負けてとんでもない方向に吹き飛ばされた。
 
「くっ!」

 浮き上がってきたレオポルトの体に向かってダズウェルは踵を叩き込む。
 攻撃力は速度とほぼ比例するもの。ダズウェルの回転力と重力による加速を得た踵落としに、上昇気流で浮かび上がるレオポルトの体。掛け合わせた速度から生まれる衝撃がレオポルトに襲い掛かった。

「せい!」
「速いな!」

 レオポルトにとって幸いだったのは魔法の発動時に腕を振り上げていたこと。辛うじて両腕を組み防御したものの空中では踏みとどまれずに、地面に叩きつけられた。
 土煙を巻き上げ、地面に敷かれた煉瓦をまき散らしレオポルトは背中に痛みを感じる。

「くはっ・・・・・・」

 ダズウェルの連続技が全て決まったとはいえ、一撃でやられるレオポルトではない。即座に立ち上がり、両腕をぶんぶんと振った。

「くぅ・・・・・・痺れるわい。馬鹿みたいな破壊力を遠慮なく叩き込みおって・・・・・・だが、これはワシの落ち度。お前さんが厄介な動きをするだけではなく、戦いの中に策略も持ち込むとはな。いや、勝つために用いることは全て『力』ということか。純粋な力の一つではある・・・・・・お前さんを見誤った罰だな、これは」

 腕の痺れと背中の痛みを自分のミスだと受け入れるレオポルト。その間にダズウェルはレオポルトを蹴った反動で後方に翻り、着地していた。

「その程度か、興醒めだなレオポルト・ダッセル。想像しうる強さの範疇から出ておらんぞ。その場所で満足している落伍者か、貴様も」

 そう言われたレオポルトは拳を構えながら聞き返す。

「落伍者?」
「そうだ、才能を持っていながらより上を目指さぬ者は全て落伍者。正義だ立場だと吠え、弱さを受け入れる。そこには何も残らぬというのにな! 下らん! どこまでも強さを求めるのが男の宿命だ! さぁ、吾輩をこれ以上落胆させるなよ、レオポルト・・・・・・ダッセル!」
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