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新たな激闘

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 その言い様は、既にレオポルトを敵を見定めていると考えて間違いない。
 開戦を告げる落雷からそれほど時間が経っているわけでもないが、古城の内外ではそれぞれの戦いが始まっている。バレンドット軍とゼット商会が戦う声や音も聞こえたのだろう。
 それでもこの場所から動かず、精神集中を続けていたダズウェル。
 レオポルトはそんな彼の行動に違和感を覚えた。

「戦いが始まっていると知りながら・・・・・・お前さんが動かずここで待っていた? 前情報と違いすぎるな。戦いを求め、ここにいるのではないのか」

 レオポルトが言うとダズウェルは喉の奥で笑う。
 
「ふっ・・・・・・無知!」

 短い言葉を吐き捨てたダズウェルはそのまま地面を蹴り、レオポルトとの距離を一気に詰めた。
 右半身を後ろに引いている状態を見て、戦いに慣れているレオポルトはパンチを繰り出すのだと警戒する。
 パンチは範囲が直線的かつ局所的で、体重を乗せた腕力と速度に破壊力が依存する攻撃。自らも筋力に覚えのあるレオポルトは受け止めるべく、右手を前に出す。
 しかし、ダズウェルが繰り出したのはパンチではなかった。彼は引いていた右手をレオポルトに伸ばすのではなく、勢いよく地面に向ける。
 そのまま片手で逆立ちのような体勢になると、体を縮こまらせてからバネのように跳ねてレオポルトの腹部の強烈な蹴りを入れた。

「ぐっ!」

 筋肉髭ダルマと部下に呼ばれるほど鍛えているレオポルトの腹筋でも、ダズウェルの蹴りは弾き返せない。
 大きな衝撃と痛みを受け、レオポルトの呼吸が一瞬だけ止まる。その刹那をダズウェルは無駄にしなかった。レオポルトの腹部を蹴った勢いを利用して起き上がると、竜巻のように横回転で裏拳を放つ。

「せい!」

 掛け声と共に放った裏拳だったが、それほど奇抜な攻撃ではない。予備動作を視認していたレオポルトは右腕で防御をし、動きを止めたダズウェルに前蹴りを繰り出す。
 しかし、ダズウェルも同時に前蹴りを放っており、結果的には右足同士で互いに相手を後方に弾く形となった。
 一旦、二人の間にある程度の距離が生まれたところでレオポルトは呼吸を整える。

「これがお前さんの『独特な格闘技』というやつか。なるほど、厄介ではあるな。いや・・・・・・それ以前にきになることがある」

 そう呟くレオポルトに対してダズウェルは叫び声をあげた。

「貴様はこの場に話をしに来たのか! 違うだろう。ただ戦うのみ! 貴様の武を、血煙の獅子に恥じぬ力を見せてみよ! レオポルト・ダッセル!」
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