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下した決断

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 レインの言葉を聞いたビゼラードは一瞬固まった。
 戦った彼はレインの実力を知っている。それに加えてレインが『相手の評価を間違えない』こともわかっていた。
 戦いの最中であるというのに、レインはビゼラードを自分よりも強者だと表現している。希望的観測や私情を含めずに評価する証拠だ。
 そんな男が『俺なんて足元にも及ばない』と言うのだから、余程の強者なのだろうとビゼラードは絶句したのである。

「・・・・・・私が戦線に復活にしても無駄だと言いたいわけですか・・・・・・これは私への施しではなく、あなたが私との再戦を望んでの行動。そういうことですか・・・・・・」

 ビゼラードが言うとレインは苦笑する。

「素直じゃないな、君は。どこまでも歪んでいるね」
「そう・・・・・・生きてきましたから」

 もう痛みなど感じない。ビゼラードは命の炎が消えゆくのを実感した。
 そんな彼を支えているレインにも弱っていく鼓動が伝わる。

「もう時間がなさそうだ・・・・・・さぁ、選んでくれ。このまま死ぬか、この先誰も傷つけずに生きると約束するか、だ。先に言っておくがツクネの前で嘘は通じないよ。フェレッタは感情を見抜くらしい」
「この・・・・・・タイミングで・・・・・・条件を・・・・・・私は・・・・・・」

 そこでビゼラードの意識はふっと途切れた。
 全身から力が抜け落ち、全てをレインに預ける。
 最後まで答えを出さなかったビゼラード。レインはその体をゆっくり地面に寝かせ、決断を下した。

 レインとビゼラードの戦いが始まった頃、レオポルトも自分の戦うべき相手と対峙していた。
 その男の名はダズウェル。魔法と格闘技を組み合わせた『魔法闘技』の第一人者だ。強烈な炎熱系の魔法と独特な格闘技を使う男。
 ダズウェルはこの古城に修練場を作り、世界に名を轟かせた今でも更なる強さを求めて研鑽を積んでいる。
 倉野からダズウェルの居場所を聞いていたレオポルトは、道中数人の兵士を叩き伏せ一直線に修練場に突き進んできた。
 大きな扉を開けて修練場に入ったレオポルトの目に映ったのは、上裸で仁王立ちする筋肉質な中年男性。レオポルトは彼がダズウェルであると、その気配からすぐに理解する。

「なるほど、いい筋肉と質の高い魔力だ」

 レオポルトがそう言ってもダズウェルは無言で仁王立ちを続けた。

「・・・・・・」
「精神集中でもしておるのか? 分かっておらんわけではないだろう。もう戦いは始まっているんだぞ」

 するとダズウェルはようやくレオポルトに視線を送り、冷たく言い放つ。

「貴様こそわかっているのか、もう戦いは始まっている。語るに必要なものは言葉ではなく拳のみ!」
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