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慣れた太刀筋

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 彼が振り上げた剣は鉄を溶かしかねないほどの熱を持っている。だが、魔力によって発生した炎は都合よく剣以外のものだけに影響するのだ。
 レイン自身の剣が業火を纏って襲い来る。武器を相棒と呼ぶこともあるが、無機物であるがゆえに他者の手に渡れば自分に向けられることもあるものだ。

「俺の剣で俺を斬るつもりかい? まったくいい趣味だね。自分の罰のために俺の剣を使わないでくれよ」

 鋭い太刀筋を見極め、レインは右側に回避する。
 攻撃をかわされたビゼラードは、これまでレインが見せた動きと違うことに驚愕した。

「どうしてこれまで以上の回避を・・・・・・」

 もちろん、ビゼラードの疲労やレインの全回復も関係している。しかし、最も大きな変化はビゼラードが剣を武器に選んだことだ。
 騎士であるレインが最も得意な武器は剣。最も相手にしてきたのも剣だ。
 形が不確かな魔法とは違い、剣の攻撃範囲は読みやすい。

「矜持は最後まで貫くものだよ。剣の道はそう甘くはないさ」

 言いながらレインは右手を地面に着いて、側転の要領でビゼラードの頬に蹴りを入れた。

「くっ!」

 剣を振り下ろしたばかりのビゼラードに防御の術はなく、そのまま体勢を崩す。
 その機を逃さずにレインは着地してから回し蹴りを繰り出して、ビゼラードを吹き飛ばした。その勢いで剣を放り出してしまうビゼラード。
 レインはその剣を上手くキャッチして構える。

「返してもらうよ。ああ、そうだ。俺は剣と戦うことに慣れているからね。君が剣を使ってくれたおかげで回避できた。やっぱりコイツは俺の相棒だよ」
「何故だ! 小さな魔物が現れただけで!」

 受け身を取り立ち上がったビゼラードは自分に降りかかった不利益を叫んだ。
 するとレインは肩にしがみついているツクネに視線を向けながら微笑む。

「仲間を『群れ』だとか『多数弱者』と切り捨てる君にはわからないさ」
「く・・・・・・最初からそのつもりで戦っていたと言うのですか?」
「いや、どうしてツクネがここにいるのか、ツクネが何をしてくれたのかは俺にもわからない」
「偶然というわけですか・・・・・・」
「強いて言うなら仲間だからかな」

 レインの言う通り彼にもツクネの行動は理解できない。
 倉野から役割を与えられていたはずのツクネがに、しかもレインの戦っている場所に現れた理由。ツクネがレインの傷を一瞬で癒した方法。わからないことはいくらでもある。
 たった一つ、確かなことは『仲間』であることだ。

「今、それ以外の言葉は必要ないよ」

 ビゼラードに対してそう言い放ったレインは全ての魔力を剣に込める。
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