680 / 729
連載
私の罪と罰
しおりを挟む
魔法ではなく奇跡。そう表現した方が伝わりやすいだろう。
レイン自身も何が起きたのか分かってはいなかった。理解できているのは、ツクネの魔法によって命を救われたこと。
もう一度戦う権利を得たことだ。
「返してくれるかな、俺の剣。いや、誇りを」
言いながらレインは右手をビゼラードに伸ばす。
しかしビゼラードは未だ狼狽えの中にいた。
「何が起きたんだ・・・・・・私の勝利は揺るがなかったはず! あなたの死は絶対だったはずだ! 何が・・・・・・何が!」
「俺の声も届かないのかい? 確かに君は俺に勝った。認めるさ、俺は負けたんだ。けれど、俺には仲間がいた。俺と同じ目標をもって戦う仲間がいるんだよ」
レインはそう言いながら肩のツクネを撫でる。ツクネは嬉しそうに鼻をスンスンと鳴らした。
風魔法の持つ『生』の特性。それは身体中の流れを活性化させ、本来生物が持っている治癒力を高めるものだ。
レインは治癒力の活性化によって、ありえない速度で回復したのである。
もしもビゼラードが冷静であれば、そのことにも気づけただろう。しかし、勝ちを確信した後に理外の現象を目の当たりにした状態では『ありえない』という感想しか抱けなかった。
群れというものを嫌悪し、孤独な天才として生きてきたビゼラードには『仲間が起こした奇跡』など理解できないものである。
冷静さを欠いたビゼラードだったが、戦いを捨てたわけではない。
「何が起きようと、一度は殺めた相手・・・・・・何度戦おうとも負けるわけがありません」
ビゼラードはレインから奪い取った剣に魔力を込める。
「十回生き返るのならば十一回殺せばいい、百回生き返るのならば・・・・・・千回殺す!」
これまでビゼラードは何もないところに炎を生み出していた。魔力を何もないところに集中させ、魔法に変換するのは非常に便利である。いつでもどこでも簡単に発動することができるという利点は大きい。その上、何にも縛られないので自由度が高い。だが、その分扱いが難しいものだ。
反対に魔石や武器を介して魔法を発動すれば、ある程度形を定められるものの出力自体は大きくなる。
魔力を著しく消費しているとはいえ、世界最高の魔力を保有しているビゼラードが武器を持てば『最強の剣士』になりえるのだった。
「君が武器を・・・・・・持たないのはこだわりかと思っていたよ」
自分の剣に炎を纏わされたレインは、その魔力の大きさに驚きながらも苦笑する。
するとビゼラードはかけていた眼鏡を投げ捨てて眉間にシワを寄せた。
「嫌いですよ、こんなものは。剣など・・・・・・弱者が自分を強者だと勘違いするために握るもの。ですが、あなたを屠るためならば手段を選ばない。ああ、誤解しないでください。あなたへの罰ではありません。冷静さを欠き、あなた如きに傷を負わされた私自身への罰です。私の矜持に反することで、この戦いを忘れません。さぁ、死になさい!」
レイン自身も何が起きたのか分かってはいなかった。理解できているのは、ツクネの魔法によって命を救われたこと。
もう一度戦う権利を得たことだ。
「返してくれるかな、俺の剣。いや、誇りを」
言いながらレインは右手をビゼラードに伸ばす。
しかしビゼラードは未だ狼狽えの中にいた。
「何が起きたんだ・・・・・・私の勝利は揺るがなかったはず! あなたの死は絶対だったはずだ! 何が・・・・・・何が!」
「俺の声も届かないのかい? 確かに君は俺に勝った。認めるさ、俺は負けたんだ。けれど、俺には仲間がいた。俺と同じ目標をもって戦う仲間がいるんだよ」
レインはそう言いながら肩のツクネを撫でる。ツクネは嬉しそうに鼻をスンスンと鳴らした。
風魔法の持つ『生』の特性。それは身体中の流れを活性化させ、本来生物が持っている治癒力を高めるものだ。
レインは治癒力の活性化によって、ありえない速度で回復したのである。
もしもビゼラードが冷静であれば、そのことにも気づけただろう。しかし、勝ちを確信した後に理外の現象を目の当たりにした状態では『ありえない』という感想しか抱けなかった。
群れというものを嫌悪し、孤独な天才として生きてきたビゼラードには『仲間が起こした奇跡』など理解できないものである。
冷静さを欠いたビゼラードだったが、戦いを捨てたわけではない。
「何が起きようと、一度は殺めた相手・・・・・・何度戦おうとも負けるわけがありません」
ビゼラードはレインから奪い取った剣に魔力を込める。
「十回生き返るのならば十一回殺せばいい、百回生き返るのならば・・・・・・千回殺す!」
これまでビゼラードは何もないところに炎を生み出していた。魔力を何もないところに集中させ、魔法に変換するのは非常に便利である。いつでもどこでも簡単に発動することができるという利点は大きい。その上、何にも縛られないので自由度が高い。だが、その分扱いが難しいものだ。
反対に魔石や武器を介して魔法を発動すれば、ある程度形を定められるものの出力自体は大きくなる。
魔力を著しく消費しているとはいえ、世界最高の魔力を保有しているビゼラードが武器を持てば『最強の剣士』になりえるのだった。
「君が武器を・・・・・・持たないのはこだわりかと思っていたよ」
自分の剣に炎を纏わされたレインは、その魔力の大きさに驚きながらも苦笑する。
するとビゼラードはかけていた眼鏡を投げ捨てて眉間にシワを寄せた。
「嫌いですよ、こんなものは。剣など・・・・・・弱者が自分を強者だと勘違いするために握るもの。ですが、あなたを屠るためならば手段を選ばない。ああ、誤解しないでください。あなたへの罰ではありません。冷静さを欠き、あなた如きに傷を負わされた私自身への罰です。私の矜持に反することで、この戦いを忘れません。さぁ、死になさい!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,848
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。