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連載
『生』の風魔法
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ツクネが発動した風の魔力には元々二つの特性がある。
一つは風そのものを攻撃とする特性。刃に纏わせ攻撃力を高めるのはこちらの特性だ。
もう一つは『生命』を司る特性。全ての命には流れがある。植物などは風を用いて繁殖することもあり、そもそも全ての生物には体の中に流れが存在している。
ツクネがレインに放ったのは『生命』の風魔法だった。
「・・・・・・ツクネ?」
何をされているのかわからず、ただ名前を呼ぶレイン。ただ不快感など全くなく、身体中が温かく心地いい。全ての細胞が活性化し、血液が循環するのがわかる。
「クー!」
ツクネはさらに魔力を放出した。
その様子を黙って見逃すわけもなくビゼラードが立ち上がり剣を構える。
「何者かは知りませんが余計な真似はしないでいただけますか。その男に与するのならば私にとっては敵。障壁にすぎません。戦場に顔を突っ込んだのならば、立場や能力はいいわけになりませんよ!」
そう言ってビゼラードはツクネ相手に剣を振った。
たとえツクネが何をしようとしても、ビゼラードが放つ攻撃の方が早い、と彼はそう思っていた。それが回復魔法だとしても、である。
しかし、ビゼラードの予想は大きく裏切られた。
「おいおい、俺の仲間に手を出さないでもらえるかな?」
ビゼラードが聞いた言葉は先ほどまで話すものやっとだったレインの声。ビゼラードが受けたのは先ほどまで起き上がることもできなかったレインから放たれた渾身の蹴りだった。
「ぐはっ」
腹部に強烈な蹴りを受けたビゼラードは後方に飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
予期していなかったレインの攻撃にたいして防御も回避も間に合わなかったのだ。
「な・・・・・・何故、あなたが」
上体だけ起こしたビゼラードの目に映ったのは、胸の穴どころか全身の傷が消え余裕の笑みを浮かべているレインである。
その方にはツクネが乗り、嬉しそうに頬ずりをしていた。
「ありがとう、ツクネ。君のおかげでもう一度戦うことができるよ」
「クククッ!」
そんな姿を見たビゼラードはわかりやすく狼狽える。
「な、なんですか、それは。回復魔法なんてレベルじゃない・・・・・・完全な致命傷を・・・・・・死を待つだけだった男を一瞬で完治させた? ありえない!」
「この世界にありえないなんてことは存在しないよ。起きたことは全て、現実さ。とは言っても、俺自身も信じられなかったけどね。ツクネ、君は何者なんだい?」
レインが問いかけるとツクネはただくびを傾げた。
「クー?」
「ははっ、ツクネの言葉がわかるのはクラノだけか。それでもいいさ。ただ一つわかっていることは俺は負けて、その上で勝てるってことだ」
体の感覚を確かめるようにレインは手のひらを握ってから開く。一切のダメージどころか疲れもない。
「ありえない、ありえない、ありえない、ありえない」
魔力に関して並ぶ者のいないビゼラードだからこそ、今起きたことの異常さに固執していた。ツクネがレインに施した魔法は常軌を逸している。
魔法の存在するこの世界で、こんな表現をするのはおかしいのだが『魔法のよう』であった。
一瞬で全ての傷を完治させるなんて回復魔法はこの世界にも存在しない。
一つは風そのものを攻撃とする特性。刃に纏わせ攻撃力を高めるのはこちらの特性だ。
もう一つは『生命』を司る特性。全ての命には流れがある。植物などは風を用いて繁殖することもあり、そもそも全ての生物には体の中に流れが存在している。
ツクネがレインに放ったのは『生命』の風魔法だった。
「・・・・・・ツクネ?」
何をされているのかわからず、ただ名前を呼ぶレイン。ただ不快感など全くなく、身体中が温かく心地いい。全ての細胞が活性化し、血液が循環するのがわかる。
「クー!」
ツクネはさらに魔力を放出した。
その様子を黙って見逃すわけもなくビゼラードが立ち上がり剣を構える。
「何者かは知りませんが余計な真似はしないでいただけますか。その男に与するのならば私にとっては敵。障壁にすぎません。戦場に顔を突っ込んだのならば、立場や能力はいいわけになりませんよ!」
そう言ってビゼラードはツクネ相手に剣を振った。
たとえツクネが何をしようとしても、ビゼラードが放つ攻撃の方が早い、と彼はそう思っていた。それが回復魔法だとしても、である。
しかし、ビゼラードの予想は大きく裏切られた。
「おいおい、俺の仲間に手を出さないでもらえるかな?」
ビゼラードが聞いた言葉は先ほどまで話すものやっとだったレインの声。ビゼラードが受けたのは先ほどまで起き上がることもできなかったレインから放たれた渾身の蹴りだった。
「ぐはっ」
腹部に強烈な蹴りを受けたビゼラードは後方に飛ばされ、背中から地面に叩きつけられる。
予期していなかったレインの攻撃にたいして防御も回避も間に合わなかったのだ。
「な・・・・・・何故、あなたが」
上体だけ起こしたビゼラードの目に映ったのは、胸の穴どころか全身の傷が消え余裕の笑みを浮かべているレインである。
その方にはツクネが乗り、嬉しそうに頬ずりをしていた。
「ありがとう、ツクネ。君のおかげでもう一度戦うことができるよ」
「クククッ!」
そんな姿を見たビゼラードはわかりやすく狼狽える。
「な、なんですか、それは。回復魔法なんてレベルじゃない・・・・・・完全な致命傷を・・・・・・死を待つだけだった男を一瞬で完治させた? ありえない!」
「この世界にありえないなんてことは存在しないよ。起きたことは全て、現実さ。とは言っても、俺自身も信じられなかったけどね。ツクネ、君は何者なんだい?」
レインが問いかけるとツクネはただくびを傾げた。
「クー?」
「ははっ、ツクネの言葉がわかるのはクラノだけか。それでもいいさ。ただ一つわかっていることは俺は負けて、その上で勝てるってことだ」
体の感覚を確かめるようにレインは手のひらを握ってから開く。一切のダメージどころか疲れもない。
「ありえない、ありえない、ありえない、ありえない」
魔力に関して並ぶ者のいないビゼラードだからこそ、今起きたことの異常さに固執していた。ツクネがレインに施した魔法は常軌を逸している。
魔法の存在するこの世界で、こんな表現をするのはおかしいのだが『魔法のよう』であった。
一瞬で全ての傷を完治させるなんて回復魔法はこの世界にも存在しない。
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