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正義とは
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満身創痍とまでは言わずともレインが一方的にダメージを受けている状況である。
圧倒的にビゼラードが有利であることは明確だ。
それでもレインは余裕の笑みを浮かべる。
「いたぶられているつもりはないよ。それに俺の極限を勝手に決めないでもらえるかい? 知らないのか、主役は窮地に陥ってから活躍するものなのさ」
レインはそう言い放ちビゼラードに向けて一歩踏み出した。自分の傷など気にせず右足に全体重を乗せた大きな一歩。それは走るというよりも横向きに飛んだと言った方が正しい。
そのまま剣を腰の位置に構え、横向きの斬撃を放った。
どれだけ慣れている者でも、いや慣れている者だからこそ剣の一撃を警戒する。しかし、ビゼラードにとってレインの攻撃など警戒する必要などないらしく、瞬き一つせずに右足で地面を踏みつけた。
すると、直後にその場から火柱が立ち上がり、ビゼラードの正面で障害物となる。
全速力で突撃していたレインは文字通り『飛んで火に入る』状態である。
「私の手が停止していると見て、無策で飛び込んできましたね。手の動きなどなくともこの程度ならば発動可能ですよ。自ら死に飛び込むとはいい趣味をしていますね」
「予備動作なしでこのレベルの魔法か!」
レインは右足で踏ん張り、ギリギリのところで右側に回避した。
だがビゼラードはレインが右側に回避することすら先読みし、既に炎の槍を放っていた。
「右利きのあなたが攻撃につなげることを考えればこちら側に飛ぶしかありませんよね。しかし、ここは行き止まり・・・・・・デットエンドです!」
「くっ!」
回避したばかりで足が追いついていないレインに再度回避できるわけもない。体の真ん中目掛けて襲いくる炎になすすべなくレインは貫かれた。
かと、思われたが間一髪のところで剣で受け止め、その衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「ぐぁ!」
致命傷だけは避けられたものの、剣の面積では防ぎきれなかった火の粉を身体中に浴びた。細かな火傷を負いながら吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられるレイン。
それに対してビゼラードは涼しい顔でため息を吐く。
「やれやれ、私との差を肌で感じ取ったでしょうに。そんな無様な姿を晒しているあなたが私に何で勝てるというのです?」
問いかけられたレインは剣を杖代わりにして立ち上がり、いつものように笑みを浮かべた。
「覚悟と騎士道さ。それだけの力を持ちながら正義のない君に負けるわけにはいかないな」
「正義、ですか。正義など形のないもの。私にとっての正義があなたにとってそうではないというだけでしょう。力こそが正義・・・・・・力なき者は正義に従うだけです」
「ふっ、正義の反対は別の正義ということかな? じゃあ、勝った方の正義が正しいってことで!」
圧倒的にビゼラードが有利であることは明確だ。
それでもレインは余裕の笑みを浮かべる。
「いたぶられているつもりはないよ。それに俺の極限を勝手に決めないでもらえるかい? 知らないのか、主役は窮地に陥ってから活躍するものなのさ」
レインはそう言い放ちビゼラードに向けて一歩踏み出した。自分の傷など気にせず右足に全体重を乗せた大きな一歩。それは走るというよりも横向きに飛んだと言った方が正しい。
そのまま剣を腰の位置に構え、横向きの斬撃を放った。
どれだけ慣れている者でも、いや慣れている者だからこそ剣の一撃を警戒する。しかし、ビゼラードにとってレインの攻撃など警戒する必要などないらしく、瞬き一つせずに右足で地面を踏みつけた。
すると、直後にその場から火柱が立ち上がり、ビゼラードの正面で障害物となる。
全速力で突撃していたレインは文字通り『飛んで火に入る』状態である。
「私の手が停止していると見て、無策で飛び込んできましたね。手の動きなどなくともこの程度ならば発動可能ですよ。自ら死に飛び込むとはいい趣味をしていますね」
「予備動作なしでこのレベルの魔法か!」
レインは右足で踏ん張り、ギリギリのところで右側に回避した。
だがビゼラードはレインが右側に回避することすら先読みし、既に炎の槍を放っていた。
「右利きのあなたが攻撃につなげることを考えればこちら側に飛ぶしかありませんよね。しかし、ここは行き止まり・・・・・・デットエンドです!」
「くっ!」
回避したばかりで足が追いついていないレインに再度回避できるわけもない。体の真ん中目掛けて襲いくる炎になすすべなくレインは貫かれた。
かと、思われたが間一髪のところで剣で受け止め、その衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「ぐぁ!」
致命傷だけは避けられたものの、剣の面積では防ぎきれなかった火の粉を身体中に浴びた。細かな火傷を負いながら吹き飛ばされ背中から地面に叩きつけられるレイン。
それに対してビゼラードは涼しい顔でため息を吐く。
「やれやれ、私との差を肌で感じ取ったでしょうに。そんな無様な姿を晒しているあなたが私に何で勝てるというのです?」
問いかけられたレインは剣を杖代わりにして立ち上がり、いつものように笑みを浮かべた。
「覚悟と騎士道さ。それだけの力を持ちながら正義のない君に負けるわけにはいかないな」
「正義、ですか。正義など形のないもの。私にとっての正義があなたにとってそうではないというだけでしょう。力こそが正義・・・・・・力なき者は正義に従うだけです」
「ふっ、正義の反対は別の正義ということかな? じゃあ、勝った方の正義が正しいってことで!」
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