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冴わたる狂気
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「じゃあ、わざと油断してるように・・・・・・」
絶望的な疑念を倉野が言葉にすると、ディションは蛇のような笑みを浮かべた。
「当たり前ぇだろうが。それに俺ぁ背後にしか防御魔法を張ってねぇ、何でかわかるか、おい。テメェが素人臭かったからだよ。少しばかり警戒させてやりゃあ、真っ向から向き合わずに済む方法を考える。言い訳するようにな。背後から攻撃を仕掛けた方が確実だ、なんてテメェ自身が恐れてるだけだと気づきもせずによ」
「くっ・・・・・・」
返す言葉がない。油断していると踏んで決着を急いだこと、真正面からの攻撃を避け背後に回ったこと、そしてそれら全てを読まれた結果が地面に叩き出された情けない姿であること。全て図星だ。
「最初から警戒されてたっていうのか」
倉野が問いかけるとディションは舌舐めずりをしながら剣を向ける。
「ああ、そりゃそうだろ。気配もなく突然現れた男。しかもだ、戦いや表情に関しては素人同然。となりゃあ、お前がクラノだろ? デュワールの奴から聞いてるよ。意味もわからねぇ力を持ったど素人がいるってな」
ディションの言葉を聞いた倉野は一気に血の気が引いた。デュワールが自分のことを探っていたのは知っている。奴は知っていて倉野を殺そうとした男だ。
その可能性を考えていなかったわけではない。倉野のことを警戒し、仲間に話していることは想定していた。
だが倉野がスキル『説明』で調べた結果、デュワールは倉野の能力については掴めていない、と出ている。
つまりディションは今、倉野と対峙したこの短時間で見抜き適切な対処をしたのだった。
「僕のことを・・・・・・」
「ああ、それだけじゃねぇぞ。テメェ、魔法が使えねぇな?」
「っ・・・・・・!」
ディションが見抜いたのは倉野の絶望的な弱点である。この時点からディションは倉野を『途轍もない能力を持った素人』と判断し、油断などしない。
その上、魔法が使えないということは魔法による防御を突破できないということだ。これから先、ディションは全身を魔法防御で包むだろう。
「ほら、まだ立ち上がるか、おい。さっさと諦めて斬られとけ。苦しんで死ぬか、死を望むほど苦しんで死ぬか、テメェに選べるのはこの二つだけだ」
諦める。その言葉が倉野に突き刺さった。
相手の油断という唯一の正気を失った今、倉野にできることは負けないこと。勝つことは出来ずとも、スキルを発動し回避し続ければ負けることはない。だがそれではノエルを救いことなどできないだろう。
もしもディションが痺れを切らし『ドラゴンの逆鱗』を発動すれば全てはおしまいだ。相手は世界で最も狂ってると名高い男。発動しない保証はなかった。
絶望的な疑念を倉野が言葉にすると、ディションは蛇のような笑みを浮かべた。
「当たり前ぇだろうが。それに俺ぁ背後にしか防御魔法を張ってねぇ、何でかわかるか、おい。テメェが素人臭かったからだよ。少しばかり警戒させてやりゃあ、真っ向から向き合わずに済む方法を考える。言い訳するようにな。背後から攻撃を仕掛けた方が確実だ、なんてテメェ自身が恐れてるだけだと気づきもせずによ」
「くっ・・・・・・」
返す言葉がない。油断していると踏んで決着を急いだこと、真正面からの攻撃を避け背後に回ったこと、そしてそれら全てを読まれた結果が地面に叩き出された情けない姿であること。全て図星だ。
「最初から警戒されてたっていうのか」
倉野が問いかけるとディションは舌舐めずりをしながら剣を向ける。
「ああ、そりゃそうだろ。気配もなく突然現れた男。しかもだ、戦いや表情に関しては素人同然。となりゃあ、お前がクラノだろ? デュワールの奴から聞いてるよ。意味もわからねぇ力を持ったど素人がいるってな」
ディションの言葉を聞いた倉野は一気に血の気が引いた。デュワールが自分のことを探っていたのは知っている。奴は知っていて倉野を殺そうとした男だ。
その可能性を考えていなかったわけではない。倉野のことを警戒し、仲間に話していることは想定していた。
だが倉野がスキル『説明』で調べた結果、デュワールは倉野の能力については掴めていない、と出ている。
つまりディションは今、倉野と対峙したこの短時間で見抜き適切な対処をしたのだった。
「僕のことを・・・・・・」
「ああ、それだけじゃねぇぞ。テメェ、魔法が使えねぇな?」
「っ・・・・・・!」
ディションが見抜いたのは倉野の絶望的な弱点である。この時点からディションは倉野を『途轍もない能力を持った素人』と判断し、油断などしない。
その上、魔法が使えないということは魔法による防御を突破できないということだ。これから先、ディションは全身を魔法防御で包むだろう。
「ほら、まだ立ち上がるか、おい。さっさと諦めて斬られとけ。苦しんで死ぬか、死を望むほど苦しんで死ぬか、テメェに選べるのはこの二つだけだ」
諦める。その言葉が倉野に突き刺さった。
相手の油断という唯一の正気を失った今、倉野にできることは負けないこと。勝つことは出来ずとも、スキルを発動し回避し続ければ負けることはない。だがそれではノエルを救いことなどできないだろう。
もしもディションが痺れを切らし『ドラゴンの逆鱗』を発動すれば全てはおしまいだ。相手は世界で最も狂ってると名高い男。発動しない保証はなかった。
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