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ディション邂逅

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 バレンドット入国前、ノエルが倉野たちに託した作戦。
 自分が何をするつもりなのか、倉野がスキル『説明』で見抜くことを見越して考えていたのは『ゼット商会がドラゴンの逆鱗を使用できないよう散り散りにすること』と『作戦開始時に落雷魔法で合図をすること』『同時にゼット商会本拠地に火を放ち、連携を物理的に断ち切ること』だった。
 その情報を基に倉野たちは作戦立案を行い今に至る。
 ノエルの信じる心がこの瞬間作り上げた。ノエルを信じる心がこの時を迎えさせた。
 落雷と共に倉野はスキル『神速』を発動。その瞬間、背後で待機していた兵たちからは倉野の姿が消えたように見える。
 神の如き速度で動く倉野にとっては『時間停止』と同じようなものだ。
 このスキル『神速』の強さは『速く動ける』だけではない。真骨頂は『他人の何百倍もの速度で思考できる』ことにあった。
 全ての思考を置き去りにして思考できる。頭脳的には凡人と言わざるを得ない倉野でも、時間をかけて天才に追いつき追い越すことが可能だ。

「まずはスキルを『説明』を並行発動。対象はディションの居場所」

 まだ落雷の残影が残っている中、倉野は動き出す。
 スキル『説明』の画面が表示され、対象を映し出した。

 ディションの現在地。古城の中庭にて落雷に警戒している。落雷に含まれた魔力に気づき、発生源を探っている。周囲に誰もおらず一人である。

 その情報を確認した倉野は好都合だ、と頷いた。

「よし、とにかく条件は揃ってる。あとはディションを倒すだけだ!」

 スキル『神速』を維持したまま倉野は古城に突撃する。
 闇夜を切り裂く一筋の光となり、荒れ果てた古城に辿り着いた倉野はその様相に気後れした。まるでホラー映画に出てくるような廃城である。外壁は朽ち果て、雑草が栽培されているレベルで生い茂っていた。中から吸血鬼かゾンビでも出てきそうな雰囲気である。まさに魔王城。敵と戦うには相応しい舞台かもしれない。
 
「よくこんなところに住めるな。建築に関する法があれば一発アウトだって。ホラーは苦手なんだけど、そうも言ってられないし中庭に向かうか」

 不快なほど生えている雑草をかき分け、ディションのいる場所に向かう。
 古城の外壁に沿って進むと朽ちた割れ目や窓から火の粉が飛び散っている様子が見えた。スキル『神速』を解除すれば乾燥した木材に火が着き、燃え広がることが想像できる。作戦通りだ。
 ようやく雑草を抜けると開けた場所に辿り着き、落雷に視線を向けながら腰の剣に手をかけている男が見える。身長が高く黒いロングコートを着た銀髪の男、ディションだ。
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