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最後の軍議

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 倉野たちとバレンドットの同盟が成された謁見から三日。数回の軍議を挟み、準備を進めてきた。その間も倉野たちが作戦に参加することはエクレールとヴェルフェール以外には知られないように努めている。もちろんヴェルフェールの腹心であるサウザンドにも全てを話してはいない。
 そして今日、倉野たち四人とエクレール、ヴェルフェールだけで最後の軍議が行われていた。
 場所はバレンドット王城の一室である。王城の中と同じく、城内部にしては簡素な部屋だ。大きな机を囲んで全員が椅子に座り、最終確認を行う。

「夕暮れを過ぎ、もうしばらくすれば真っ暗になるでしょうね」

 部屋に一つだけある窓から外を眺めながらヴェルフェールが言った。彼の言葉からはどことなく緊張感が伺える。
 そんなヴェルフェールにレインが問いかけた。

「ええ、もうすぐです。ヴェルフェール殿、バレンドット軍の状態は?」
「万全ですよ、レイン殿。夜に備えて休息を取らせ、今は武器の点検と隊ごとに陣形の最終確認をしています」

 ヴェルフェールはレインの問いに答えてから「まさか、こんな方法で」と続ける。

「兵に準備をさせつつも、作戦概要をギリギリまで隠すとは。このような戦い方は初めてですよ」

 そうここまでの苦労を話すヴェルフェール。
 今回の作戦の主軸はどこまでいっても倉野たちだ。その存在を隠して兵の準備を進めることなど、本来できるわけがない。
 戦え、と言われれば戦うのが兵の使命だが、何も知らずに命をかけることなどできないだろう。それでも情報が漏洩すれば全てが崩れ去る。隠し通すしかなかった。
 そこで倉野たち四人の代わりになる人物をバレンドット軍内で四人選び、指揮系統を作り上げたのである。作戦が始まればヴェルフェールからその四人に全てを告げ、倉野たちと入れ替わるように指示する。
 
「戦いはもう始まっている、とお前は言ったな・・・・・・レオポルト」

 エクレールにそう言われたレオポルトは小さく頷いた。

「ええ、その通りです、エクレール王。相手が何をしてくるかわからない以上、どれだけ警戒を重ねてもそれが最善ということはないでしょう。その中でもワシらは出来る限りをしなければなりません。これはゼット商会が始めた情報戦。前哨戦どころではない、重要な戦いです」
「戦いも随分と変わったのだな。剣を振るい、力で叩き潰すだけではないということか」
「どうでしょうかな。『どちらが』というよりも『どちらも』と言った方が正しいかもしれません。しかし、戦いが始まれば結局は力のぶつかり合いになります。思い出しますな、エクレール王」

 言いながらレオポルトは不敵な笑みを浮かべる。
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