646 / 729
連載
もう一人の仲間
しおりを挟む
その中でも四十二番を提案したレイン。倉野としても異論はない。ただ四十二番が『死に』とも読め、縁起が悪い番号だな、と思うだけだ。
百を超える作戦を書き留めた羊皮紙。バレンドット入国前に持て余していた時間で様々なシュミレーションを繰り返し書き上げた作戦書だ。
その中でもバレンドットの協力、ヴェルフェールの正体が敵ではない、エクレールがノエルを救う気がある、という条件に当てはまるのは六つ。四十二番はそのうちの一つだった。
「僕も四十二番の案に賛成です。他の作戦では不測の事態に対応できませんし、保険はかけておくべきですね」
倉野が自分の意見を述べると、リオネは少し考えてから頷く。
「なるほど、保険。クラノさんの言う保険とはツクネちゃんのことですね?」
彼女の言う通りだった。作戦四十二番が他の六つとは違うところ、それは倉野とツクネが別行動をとるという点である。
「そうです」
倉野は答えながら、鞄の中ですやすやと眠るツクネを眺めた。
本当ならばツクネと別行動を取りたくはない。もしもスキルが通用しない相手が現れた場合、魔法を使って倉野を守れるのはツクネだけだ。もちろん、手段として考えているわけではない。何よりツクネは大切な相棒で、家族だ。離れたくないのは当然である。
それでも今回は何が起きるかわからない上に、何が起きても守らなければならないものがあるのだ。何をしてでもノエルと、ノエルの守りたいバレンドットを守る。そのための別行動だった。
「ツクネは人間の心に敏感です。おそらく僕が違和感を覚えてスキル『説明』で見抜くよりも早い。その能力を活かしてツクネには何か起きた時の対処をしてもらいます」
倉野はそう言ってツクネを抱き上げる。眠っていたツクネは倉野の手に起こされ、眠たそうな目で見上げる。
どうしたの? とでも言いたそうな顔に倉野が話しかけた。
「ごめんな、ツクネ。起きてくれるか?」
「クー?」
前足で器用に顔を擦りながら倉野の話を聞くツクネ。
既に立案した作戦だとはいえ、ツクネの意思を尊重しなければならない。無理に命懸けの戦いに巻き込むわけにはいかなかった。そう考え、倉野はツクネに問いかける。
「なぁ、ツクネ」
「クク」
「僕たちに力を貸してくれるかい? ノエルさんやこの国を救うためにお前の力を貸して欲しいんだ」
「クー!」
寝起きだというのにツクネは元気一杯に飛び跳ねる。当然だ、と言わんばかりに倉野の右手にまとわりついた。
「ははっ、ありがとう、ツクネ。これで始められるよ、作戦四十二番を」
百を超える作戦を書き留めた羊皮紙。バレンドット入国前に持て余していた時間で様々なシュミレーションを繰り返し書き上げた作戦書だ。
その中でもバレンドットの協力、ヴェルフェールの正体が敵ではない、エクレールがノエルを救う気がある、という条件に当てはまるのは六つ。四十二番はそのうちの一つだった。
「僕も四十二番の案に賛成です。他の作戦では不測の事態に対応できませんし、保険はかけておくべきですね」
倉野が自分の意見を述べると、リオネは少し考えてから頷く。
「なるほど、保険。クラノさんの言う保険とはツクネちゃんのことですね?」
彼女の言う通りだった。作戦四十二番が他の六つとは違うところ、それは倉野とツクネが別行動をとるという点である。
「そうです」
倉野は答えながら、鞄の中ですやすやと眠るツクネを眺めた。
本当ならばツクネと別行動を取りたくはない。もしもスキルが通用しない相手が現れた場合、魔法を使って倉野を守れるのはツクネだけだ。もちろん、手段として考えているわけではない。何よりツクネは大切な相棒で、家族だ。離れたくないのは当然である。
それでも今回は何が起きるかわからない上に、何が起きても守らなければならないものがあるのだ。何をしてでもノエルと、ノエルの守りたいバレンドットを守る。そのための別行動だった。
「ツクネは人間の心に敏感です。おそらく僕が違和感を覚えてスキル『説明』で見抜くよりも早い。その能力を活かしてツクネには何か起きた時の対処をしてもらいます」
倉野はそう言ってツクネを抱き上げる。眠っていたツクネは倉野の手に起こされ、眠たそうな目で見上げる。
どうしたの? とでも言いたそうな顔に倉野が話しかけた。
「ごめんな、ツクネ。起きてくれるか?」
「クー?」
前足で器用に顔を擦りながら倉野の話を聞くツクネ。
既に立案した作戦だとはいえ、ツクネの意思を尊重しなければならない。無理に命懸けの戦いに巻き込むわけにはいかなかった。そう考え、倉野はツクネに問いかける。
「なぁ、ツクネ」
「クク」
「僕たちに力を貸してくれるかい? ノエルさんやこの国を救うためにお前の力を貸して欲しいんだ」
「クー!」
寝起きだというのにツクネは元気一杯に飛び跳ねる。当然だ、と言わんばかりに倉野の右手にまとわりついた。
「ははっ、ありがとう、ツクネ。これで始められるよ、作戦四十二番を」
0
お気に入りに追加
2,851
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。