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マルチエンディングシステム
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エクレールとの謁見を終えた倉野たちは「少し時間が欲しい。時間に余裕があるのならば、少しだけ待っていてくれ」と打診される。
事実確認と状況把握が理由だったが、真意は受け入れる時間が欲しいというところだろう。
まだ作戦開始までは時間がある、と知っている倉野たちはその提案を受け入れた。但し倉野たち側からも条件を出している。
エクレールとヴェルフェール以外には作戦開始まで『ゼット商会との全面戦争で決着をつける』という内容以外話さないこと。これが条件だった。
しばらくエクレールとヴェルフェールで話し合っていたが、万全を期すためならば、と受け入れた。
そのような経緯があり、現在倉野たちは最初に案内された宿で待機している。それぞれに豪華な一部屋が与えられたのだが、説明要員としてレオポルトだけは王城に残った。
これは休むための時間ではない。ようやくバレンドット軍の助力を取り付けたのだ。それを前提とした作戦の立案が求められる。
倉野の部屋にレインとリオネが集合していた。
「さて、ようやくスタート地点に立ったってところかい?」
ベッドに座る倉野とリオネにレインが言う。レイン自身は部屋に置かれた木製の椅子に腰掛けている。
レインの言葉を聞いたリオネは髪を耳にかけながら頷いた。
「そうですね。戦いはこれからです」
「でも、エクレール王の真意を知れたことは大きな一歩ですよ。おかげでノエルさんを救う話ができました」
そう倉野が続ける。エクレールが本心から子どもたちを犠牲にしようと考えていれば、説得にはもっと手間がかかっただろう。
最悪の場合、倉野たちだけで戦うことも考えなければならなかった。その場合不測の事態には対応できない。例えばバジル・インフェルノが戦場に出てくるようなことがあれば、多勢に押し潰されていただろう。
ともかく最悪の事態は回避できたのだ。
「ああ、そうだね。ノエルを救うという点で合意できたのは大きい。俺たちの背後にバレンドット軍を構えることもできた。俺たちは俺たちのすべきことをしよう。作戦の立案だ」
状況を再確認しながらレインが言う。
とはいえ、それほど大変なことはない。作戦の立案よりも選択と言った方が正しいだろう。
頷きながらリオネが口を開いた。
「事前に用意していた作戦の中から状況に合ったものの選択ということですね」
「ああ、そうさ。クラノ、作戦を書いた羊皮紙を出してくれるかい」
レインに言われた倉野は慌てて鞄を探る。中では心地よさそうにツクネが眠っていた。よく食べよく眠る、健康的なフェレッタだと少し癒されながら羊皮紙を取り出した。
「はい、これですね。選ぶ条件はバレンドット軍の助力が得られたこと、ヴェルフェールさんが敵ではなかったこと、またエクレール王に話した作戦に沿っていること、でしょうか」
「そうだね。俺としては最悪の事態も想定して、四十二番の作戦を推したいところかな」
倉野たちが用意した作戦の数は百を超える。状況や条件に合わせてゲームのマルチエンディングシステムのように作戦というシナリオを用意していた。
事実確認と状況把握が理由だったが、真意は受け入れる時間が欲しいというところだろう。
まだ作戦開始までは時間がある、と知っている倉野たちはその提案を受け入れた。但し倉野たち側からも条件を出している。
エクレールとヴェルフェール以外には作戦開始まで『ゼット商会との全面戦争で決着をつける』という内容以外話さないこと。これが条件だった。
しばらくエクレールとヴェルフェールで話し合っていたが、万全を期すためならば、と受け入れた。
そのような経緯があり、現在倉野たちは最初に案内された宿で待機している。それぞれに豪華な一部屋が与えられたのだが、説明要員としてレオポルトだけは王城に残った。
これは休むための時間ではない。ようやくバレンドット軍の助力を取り付けたのだ。それを前提とした作戦の立案が求められる。
倉野の部屋にレインとリオネが集合していた。
「さて、ようやくスタート地点に立ったってところかい?」
ベッドに座る倉野とリオネにレインが言う。レイン自身は部屋に置かれた木製の椅子に腰掛けている。
レインの言葉を聞いたリオネは髪を耳にかけながら頷いた。
「そうですね。戦いはこれからです」
「でも、エクレール王の真意を知れたことは大きな一歩ですよ。おかげでノエルさんを救う話ができました」
そう倉野が続ける。エクレールが本心から子どもたちを犠牲にしようと考えていれば、説得にはもっと手間がかかっただろう。
最悪の場合、倉野たちだけで戦うことも考えなければならなかった。その場合不測の事態には対応できない。例えばバジル・インフェルノが戦場に出てくるようなことがあれば、多勢に押し潰されていただろう。
ともかく最悪の事態は回避できたのだ。
「ああ、そうだね。ノエルを救うという点で合意できたのは大きい。俺たちの背後にバレンドット軍を構えることもできた。俺たちは俺たちのすべきことをしよう。作戦の立案だ」
状況を再確認しながらレインが言う。
とはいえ、それほど大変なことはない。作戦の立案よりも選択と言った方が正しいだろう。
頷きながらリオネが口を開いた。
「事前に用意していた作戦の中から状況に合ったものの選択ということですね」
「ああ、そうさ。クラノ、作戦を書いた羊皮紙を出してくれるかい」
レインに言われた倉野は慌てて鞄を探る。中では心地よさそうにツクネが眠っていた。よく食べよく眠る、健康的なフェレッタだと少し癒されながら羊皮紙を取り出した。
「はい、これですね。選ぶ条件はバレンドット軍の助力が得られたこと、ヴェルフェールさんが敵ではなかったこと、またエクレール王に話した作戦に沿っていること、でしょうか」
「そうだね。俺としては最悪の事態も想定して、四十二番の作戦を推したいところかな」
倉野たちが用意した作戦の数は百を超える。状況や条件に合わせてゲームのマルチエンディングシステムのように作戦というシナリオを用意していた。
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