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お試しクラノ

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 真に迫る表情で答えたレオポルト。そこに濁りは感じられず、エクレールは押し黙った。
 エクレールの言う通り、全ての情報を伝えさえすれば倉野たちは不要のように思える。バレンドット軍だけでも十分な戦力を保有しているだろう。もしも『ドラゴンの逆鱗』なんて存在がなければ、それでもよかった。
 だが、たらればの話に意味はない。事実『ドラゴンの逆鱗』が存在している以上、倉野たちが必要なのである。

「もちろん、バレンドット軍の戦力を軽視しているわけではありません」

 と、レオポルトが話し始める。

「ですが、状況が状況・・・・・・後の後悔などするわけにはいかないでしょう」
「後悔している頃には、バレンドットは草木も残っておらんだろうな」

 エクレールが自嘲気味に言う。
 レオポルトはそんなエクレールを説得するように語りかけた。

「ええ、ですから最善を尽くさねばなりません。この場合における最善はワシらが幹部クラスの相手をすることでしょう」
「お前たちが幹部クラスの相手だと?」

 微かにエクレールの表情が歪む。
 捉えようによっては、バレンドット軍を実力不足だと言われているようにも感じるだろう。
 彼はその真意を知ろうと聞き返したのだ。

「ゼット商会は徒党といえど、部隊を率いる幹部のような存在がおります。全世界から集めた闇の傭兵たち・・・・・・その実力は折り紙付きかつ、非道。必要なのは統率力ではなく、個の力です。また、幹部クラスの傭兵以外にも多勢がおりましょう。ワシら四人、いえノエルを含めた五人では全てを相手取ることはできません。そこはバレンドット軍に頼ることになるでしょう」

 そうレオポルトが言うと、バレンドット軍をまとめるヴェルフェールが疑問を呈する。

「我が軍は有象無象の相手をする・・・・・・ということですか。いえ、必要なのは結果ですから、不満はありませんよ。もしも、我が軍よりも、レオポルト殿たちが『個の力』を持っているのならば」

 どこか血の気の多さを感じる言葉だ。それはバレンドット軍の名誉のため、というわけでもなさそうである。相手の力を測りたい、自分がレオポルト相手にどこまで通用するのか知りたい、といった戦士の本能のようだった。
 それに気づいたレオポルトは悪役のように右側の口角だけを上げる。
 悪い顔してるなぁレオポルトさん、と思いながら倉野が状況を見守っていると、レオポルトの指が自分に向けられた。

「どうだ、ヴェルフェール殿。この中で一番戦士らしくないのは、このクラノでしょう。クラノ相手に試してみる、というのは」

 うわぁ、結局力を見せつけて押し切る気だ、と倉野は目を細める。
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