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切り札の使い方
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「その通りです、エクレール王。話は戻りますが、ワシらはノエルを救いたい。その上でノエルの故郷を焼け野原にはしたくないのです」
レオポルトが言うとエクレールは人差し指で額を掻いてから、ため息をつく。
「ここまで来てノエルを犠牲にして・・・・・・などとは言わんが難しい話だな。ノエルやクリステラルドを救いつつ、相手を刺激するわけにはいかん。奴らの手の中に『ドラゴンの逆鱗』があるからな。不利になれば最終手段を発動しかねん」
現状と起こりうる未来を把握するエクレール。しかし、レオポルトとヴェルフェールは同じように腕を組んで、同時に同じ言葉を吐いた。
「そうでしょうか?」
「そうでしょうか?」
あまりにも同時だったため、エクレールはもちろん本人たちも目を丸くして、顔を見合わせる。
「ヴェルフェール殿も同じことを?」
「ええ、レオポルト殿も俺と同じような立場にあったと聞きます。俺たちが似た発想になってもおかしくないでしょう。どちらにせよ、汚れ仕事をしてきた者の発想です」
「ふっ、そうでしょうな。ではエクレール王への説明はヴェルフェール殿にお任せしましょう」
レオポルトはそう言って身を引く。
話を任されたヴェルフェールは、改めてエクレールに自らの意見を述べた。
「ここまで聞いた情報や戦力、相手の行動を総合的に判断すると、ゼット商会の目的は馬鹿げておりますが『世界を手にすること』でしょう。その足掛かりとしてバレンドットを狙っている。足掛かりになるもの、とは土地ではなく戦力です。土地だけを手に入れても仕方がない。ですからゼット商会はノエル様やクリステラルド様を捕らえた。バレンドットを手に入れたあと、まるで自分達に正義があったかのように語るための材料です」
ヴェルフェールの言葉を聞いたエクレールは少し考えてから頷く。
「つまり、ゼット商会は可能な限り『ドラゴンの逆鱗』を使用したくない・・・・・・と?」
「ええ、あくまで『可能な限り』ですが・・・・・・それでも初手から使用してくることはないでしょう。発動タイミングとしては『死なば諸共』といったところでしょうか」
「負けるくらいならば、焼け野原にして終わる・・・・・・なるほど、濁った発想だな」
「皮肉な話ですが、切り札の使い所を知っていると評価せざるを得ません」
言いながらヴェルフェールは、口の中に広がる苦味に耐えているような表情を浮かべた。
ゼット商会の最終目標は『世界征服』だろう。そのための足掛かりにバレンドットを手に入れるのであれば、焼け野原にしてしまっては意味がない。手に入れたいのは土地ではなく戦力だからだ。
ならば、最初から『ドラゴンの逆鱗』を使うことはないだろう。追い詰められて、どうしようもなくなった時の切り札としているはずだ。
レオポルトが言うとエクレールは人差し指で額を掻いてから、ため息をつく。
「ここまで来てノエルを犠牲にして・・・・・・などとは言わんが難しい話だな。ノエルやクリステラルドを救いつつ、相手を刺激するわけにはいかん。奴らの手の中に『ドラゴンの逆鱗』があるからな。不利になれば最終手段を発動しかねん」
現状と起こりうる未来を把握するエクレール。しかし、レオポルトとヴェルフェールは同じように腕を組んで、同時に同じ言葉を吐いた。
「そうでしょうか?」
「そうでしょうか?」
あまりにも同時だったため、エクレールはもちろん本人たちも目を丸くして、顔を見合わせる。
「ヴェルフェール殿も同じことを?」
「ええ、レオポルト殿も俺と同じような立場にあったと聞きます。俺たちが似た発想になってもおかしくないでしょう。どちらにせよ、汚れ仕事をしてきた者の発想です」
「ふっ、そうでしょうな。ではエクレール王への説明はヴェルフェール殿にお任せしましょう」
レオポルトはそう言って身を引く。
話を任されたヴェルフェールは、改めてエクレールに自らの意見を述べた。
「ここまで聞いた情報や戦力、相手の行動を総合的に判断すると、ゼット商会の目的は馬鹿げておりますが『世界を手にすること』でしょう。その足掛かりとしてバレンドットを狙っている。足掛かりになるもの、とは土地ではなく戦力です。土地だけを手に入れても仕方がない。ですからゼット商会はノエル様やクリステラルド様を捕らえた。バレンドットを手に入れたあと、まるで自分達に正義があったかのように語るための材料です」
ヴェルフェールの言葉を聞いたエクレールは少し考えてから頷く。
「つまり、ゼット商会は可能な限り『ドラゴンの逆鱗』を使用したくない・・・・・・と?」
「ええ、あくまで『可能な限り』ですが・・・・・・それでも初手から使用してくることはないでしょう。発動タイミングとしては『死なば諸共』といったところでしょうか」
「負けるくらいならば、焼け野原にして終わる・・・・・・なるほど、濁った発想だな」
「皮肉な話ですが、切り札の使い所を知っていると評価せざるを得ません」
言いながらヴェルフェールは、口の中に広がる苦味に耐えているような表情を浮かべた。
ゼット商会の最終目標は『世界征服』だろう。そのための足掛かりにバレンドットを手に入れるのであれば、焼け野原にしてしまっては意味がない。手に入れたいのは土地ではなく戦力だからだ。
ならば、最初から『ドラゴンの逆鱗』を使うことはないだろう。追い詰められて、どうしようもなくなった時の切り札としているはずだ。
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