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特異な特性

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「なるほど、なるほど。これはまた大きな誤解を生んでいたようですね。それと同時に皆様が本当にバレンドットのことを考えてくださっていた、と感じました」

 四つの警戒を受けながらも平然と話し続けるヴェルフェールの姿は、なぜか勇ましく感じられた。まるで大勢の敵の中に一人で歩いて突撃するかのようである。
 これが一国の軍を任される男の胆力なのだろう、と倉野は畏怖さえ感じた。
 どのような状況でも頭の回転を止めない。無駄に振り回されない。それも資質の一つなのだろう。

「誤解・・・・・・ですか?」

 蛇の巣穴でも突くような心持ちで倉野が問いかけると、ヴェルフェールはエクレールに視線を送った。
 何かの許可を乞うような眼差しである。
 国王であるエクレールに対して、必要な言葉を削ぐのは本来不敬な行為だろう。それでもヴェルフェールが目で問いかけているのは『必要な言葉を削ぐ必要』があったからだ。
 当然、エクレールはそれに気づき首を縦に振る。

「その者たちならばよい。命を懸けて協力を誓った者たちだ・・・・・・こちらも腹のひとつも明かしてやらねば、話が進まん」
「御意の通りに」

 許可を得たヴェルフェールは再び倉野たちの方に向き直り、口を開いた。

「俺を怪しんでいた原因としてバジル・インフェルノの名前が挙げられました。奴の特性はご存じの通り『スキル無効化』です。全てのスキルを無効化するスキル。それが戦闘に役立つことはほとんどないでしょう。しかし、警戒すべきスキルがあるのもまた事実・・・・・・俺たちはそんなスキルによってクリステラルド様を奪われました」
「どういうことですか?」

 倉野が問う。それは当然国家機密レベルの話だが、一度許可を得ているヴェルフェールは迷わない。迷いによって生じる時間の損失とその重要性を知っているのだろう。

「共通の敵の名前をゼット商会と名を統一しましょうか。俺たちはゼット商会の一人が持つスキル『盗聴』によって全ての情報を奪われていたのです。そうして、クリステラルド様の動向が知られ、拐かされるという取り返しのつかぬ失態を・・・・・・しかしスキルというものは魔力を介さない、防ぎようがないものなのです。そんな状況の中、偶然にも得た情報がバジル・インフェルノの存在でした。『スキル無効化』さえあれば情報を抜き出されることはない、と考え・・・・・・」
「バジル・インフェルノに協力を仰いだ、ということですか?」

 言葉を遮るように倉野が口を挟んだ。バジル・インフェルノの危険性を知っているからこその疑問である。強力だと思っていても利用されている可能性は否定できない。
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