621 / 729
連載
最小限の犠牲、最大限の絶望
しおりを挟む
エクレールの言葉や表情から、今ならば聞き入れてもらえるのだと判断しレオポルトは話の核心に触れ始めた。
「ドラゴンの逆鱗という話はご存じですか?」
「・・・・・・御伽噺を始めるつもりか?」
話を聞くつもりだったエクレール王でも、受け入れられないくらいの話だったらしい。この世界において『ドラゴンの逆鱗』とは、そう思われるもの。
わかりやすく例えるならば、真剣な恋愛相談をしている最中に『恋が実るキューピッドの矢』の話をされたような状態だ。
若干の不満げを表情に浮かべたエクレールに対し、レオポルトは言葉を続ける。
「そのようなつもりはありません。ワシが冗談や戯言を口にしているように見えますか?」
「見えんから問うている。ただでさえ疑問の多い状況だ。ややこしい状況な上に、話の先が見えん。余計な問いかけを増やしてくれるな」
「ではまず、ワシの話を一度飲み込んでいただきたい。信じるか否かは、その後に」
相手がこの国の王であることを忘れているかのようにレオポルトは話を主導する。
エクレールはレオポルトだからこそ、その態度をよしとして頷いた。
「ああ、そうしよう。だが、お前の言う通り信じるか否かは、話の後に決める」
エクレールの言葉を聞いたレオポルトは慎重に話を始める。
「一度飲み込んでいただきたいお話。それは『ドラゴンの逆鱗』は実在するということです。それは御伽噺でも陳腐な英雄譚でもなく、事実。そしてこれは現在のバレンドットと深く関わる話。エクレール王の望み通り、結論から申し上げましょう。ゼット商会にいる男が『ドラゴンの逆鱗』を所持しています」
「何だと? 一体、どういう・・・・・・いや、聞こう。続けてくれ」
エクレールは溢れ出る疑問をギリギリのところで堰き止め、約束通りレオポルトの話を聞き続けた。
しかし、表情や態度から分かるように、レオポルトの話を真実だと受け止め始めている。命懸けで嘘をつく利点など存在しない、と分かっているのだろう。
またレオポルトもそんなエクレールの心情を感じ取り、冷静に話を進めた。
「ご存知の通り『ドラゴンの逆鱗』が破壊されれば、その周辺はドラゴンの群れによって草木も生えぬ平らな土地にされる。もう一度言いましょう、これは御伽噺ではないのです、エクレール王。たとえエクレール王が自らの血を受け継ぐ子を犠牲にし、被害を最小限に抑えようとしても、ゼット商会は・・・・・・」
そこまでレオポルトが話したところで、エクレールが右腕を伸ばして強制的に話をやめさせる。
口を塞がれたわけではないが、エクレールの反応を確認しながら話していたレオポルトは瞬時に口の動きを止め、再び動向を見守った。
「王座を奪い取れないのであれば、この国を滅ぼす・・・・・・か」
エクレールは伸ばしていない左手を自分の額に置きながら、絶望の淵で呟く。
「ドラゴンの逆鱗という話はご存じですか?」
「・・・・・・御伽噺を始めるつもりか?」
話を聞くつもりだったエクレール王でも、受け入れられないくらいの話だったらしい。この世界において『ドラゴンの逆鱗』とは、そう思われるもの。
わかりやすく例えるならば、真剣な恋愛相談をしている最中に『恋が実るキューピッドの矢』の話をされたような状態だ。
若干の不満げを表情に浮かべたエクレールに対し、レオポルトは言葉を続ける。
「そのようなつもりはありません。ワシが冗談や戯言を口にしているように見えますか?」
「見えんから問うている。ただでさえ疑問の多い状況だ。ややこしい状況な上に、話の先が見えん。余計な問いかけを増やしてくれるな」
「ではまず、ワシの話を一度飲み込んでいただきたい。信じるか否かは、その後に」
相手がこの国の王であることを忘れているかのようにレオポルトは話を主導する。
エクレールはレオポルトだからこそ、その態度をよしとして頷いた。
「ああ、そうしよう。だが、お前の言う通り信じるか否かは、話の後に決める」
エクレールの言葉を聞いたレオポルトは慎重に話を始める。
「一度飲み込んでいただきたいお話。それは『ドラゴンの逆鱗』は実在するということです。それは御伽噺でも陳腐な英雄譚でもなく、事実。そしてこれは現在のバレンドットと深く関わる話。エクレール王の望み通り、結論から申し上げましょう。ゼット商会にいる男が『ドラゴンの逆鱗』を所持しています」
「何だと? 一体、どういう・・・・・・いや、聞こう。続けてくれ」
エクレールは溢れ出る疑問をギリギリのところで堰き止め、約束通りレオポルトの話を聞き続けた。
しかし、表情や態度から分かるように、レオポルトの話を真実だと受け止め始めている。命懸けで嘘をつく利点など存在しない、と分かっているのだろう。
またレオポルトもそんなエクレールの心情を感じ取り、冷静に話を進めた。
「ご存知の通り『ドラゴンの逆鱗』が破壊されれば、その周辺はドラゴンの群れによって草木も生えぬ平らな土地にされる。もう一度言いましょう、これは御伽噺ではないのです、エクレール王。たとえエクレール王が自らの血を受け継ぐ子を犠牲にし、被害を最小限に抑えようとしても、ゼット商会は・・・・・・」
そこまでレオポルトが話したところで、エクレールが右腕を伸ばして強制的に話をやめさせる。
口を塞がれたわけではないが、エクレールの反応を確認しながら話していたレオポルトは瞬時に口の動きを止め、再び動向を見守った。
「王座を奪い取れないのであれば、この国を滅ぼす・・・・・・か」
エクレールは伸ばしていない左手を自分の額に置きながら、絶望の淵で呟く。
0
お気に入りに追加
2,845
あなたにおすすめの小説
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。