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有言実行の王

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「別に隠していた訳ではないがな。ワシはとある戦場でエクレール王と会った、という話はしたことがあっただろう。その時にワシは一度、エクレール王を救ったことがある。それが『貸し』だ。しかし、エクレール王からは『ワシの命を救う』という形で返してもらっている。その頃のワシにとっては必要のなかったものだがな・・・・・・」

 レオポルトが説明すると、リオネが慎重に聞き返す。それはレオポルトにもエクレール王にも気遣っているような口調だった。

「じゃあ、レオポルトさんは・・・・・・自分の命を捨てる、と宣言しているんですか? 話をするためだけに」

 リオネの表情は、心配しているという言葉では表せないほど不安そうである。
 しかし、レオポルトは軽く笑ってから口を開く。

「最初に話していたはずだ。何があろうとノエルを救う、とな」
「ですが」

 悲しげな声を出すリオネ。
 そんな仲間意識を目の当たりにしてもなお、エクレールは冷たい視線を送り続ける。

「説明は終わったか? それで、レオポルト。お前が望んだのは命を懸けて私に話を聞かせるということだ。さっさと本題に戻れ」

 エクレールはそう言い放つ。
 リオネだけでなく、倉野やレインも状況を飲み込めていないが、レオポルトは話は話を続けた。

「お話ししたいのは、この国に起こり得る最悪の事態についてです」
「最悪の事態、だと?」

 明らかにエクレールの顔色が変わった。バレンドット国王として聞き流すわけにはいかないのは同然だろう。
 エクレールは苛立っているような表情で言葉を続けた。

「いくつか疑問はある。まず、どうしてお前がそれを知っている。答えようによっては、お前がゼット商会と通じていると判断し、今すぐにでも処分を下さねばならん」

 王として国を守るためならば、恩人であろうと親であろうと殺さねばならない。エクレールの判断基準は昔から変わらないのだろう。
 エクレールが言葉だけではなく、実行するとわかっている倉野やレインは、座ったまま身構えた。武器は持っていないが、足に力を入れいつでも動けるように拳を握る。
 しかし、当のレオポルトはひどく落ち着いていた。

「クラノ、レイン。大丈夫だ、エクレール王は有言実行。目的のためであれば手段を選ばない。そして、その目的はこの国と民を守ることだ。ワシの話を聞けば、納得するどころか命を取り立てようとも思わなくなるだろう」
「随分な自信だな、レオポルト」

 少し興味を持ったエクレールは「話してみろ。全てはそれからだ」と続ける。
 許可を得たレオポルトは倉野に目配せをしてから話し始めた。
 ノエルがデュワールに従い、ゼット商会に向かった理由がこの国を救うためであること。
 ゼット商会が人質にしているのはノエルやクリステラルドだけではなく、バレンドット自体であること。
 
「突拍子もない話だな。荒唐無稽という言葉はこのためにあるのだろう」
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