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連載

血塗られた過去

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 話の内容が見えず、倉野やレイン、リオネは心の中で首を傾げるがレオポルトにも説明している余裕などない。
 
「情けない話をしているのは、承知の上です。もちろん、返していただいたものは、利子でも何でもつけてお返ししますよ。それくらいの話だとご理解ください」

 レオポルトがそう続けると、エクレールは鼻から大きく息を吐き周囲を見渡す。確認しているのはこの場にいる人間の数だ。
 その上でエクレールは近くにいたヴェルフェールに話しかける。

「ヴェルフェール」
「はい」
「全員を連れてこの場から立ち去れ。扉の前にいる警備も不要だ」

 何かを決意したかのようにエクレールが命じると、ヴェルフェールは冷静ながらも疑問を口にした。

「・・・・・・一体、どういうことでしょうか。話の流れから、獣人・・・・・・いえ、彼が国王様とは知人であると推測できます。が、国王様の安全が約束されたというものではありません。状況が状況ですので、人払いが必要だとしてもせめて私だけは残していただきたい」

 ヴェルフェールの言い分はもっともだ。一国の王が無防備な状態で、謁見することなど本来あってはならない。
 しかし、エクレールは表情の凄みを増して、己の理屈を言葉にする。

「もう一度だけ言おう。全員を連れてこの場から立ち去れ」

 二度も命じられれば元帥といえども言い返すことはできないらしい。
 ヴェルフェールは頷き、四人の兵士とサウザンドを連れて謁見の間から出て行った。
 全員の背中を見送り、扉が閉まったところでエクレールが頬杖をついて口を開く。

「それで、お前が命を懸けてまで話したいこととは何だ?」

 エクレールが問いかけるとレオポルトは感服したような表情で聞き返した。

「どうして人払いを?」
「問いかけに対して問いかけをするか。まぁ、いい。お前が過去の話を持ち出したのだ、他の者に聞かせるわけにはいかんだろう。互いに血に塗れていた話だ」
「心遣い痛み入ります」

 再びレオポルトが頭を下げると、エクレールはため息をつく。

「お前といいヴェルフェールといい、二度も同じことを言わせるのだな。流行り、というやつか?」

 どうやら先ほどの問いかけを流されたことに対する不満のようだ。
 気づいたレオポルトは『命を懸けてでも話したいこと』に話を戻す。

「ワシが、いえ、私が話したいことというのは」

 そう話しかけた瞬間、ようやく倉野は理解が追いつき思わず言葉を挟み込む。

「ちょっと待ってください、もしかしてレオポルトさんが借りていたものって命なんですか?」

 他の者に伝わらないようレオポルトとエクレールが話していたこと。その全てがわかったわけではないが、レオポルトが取り立てられるもの、というのが命であると推測できた。
 倉野の言葉を聞いたエクレールは呆れたように言う。

「レオポルト、お前の連れはお前に似て話を遮る趣味でもあるのか?」
「申し訳ありません。誰にも話しておりませんでしたので」
「面倒だ。お前の口から説明してやれ。この国に関係のない者たちならば問題ないだろう」

 エクレールの許可を得たレオポルトは少し考えてから口を開いた。
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