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ドラゴンの逆鱗

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 そうレオポルトに頼まれた倉野は、再びスキル『説明』を発動してノエルの真意を話し始める。

「一応、小さな声で説明しますね。ノエルさんがデュワール・オレンジに従っている理由から・・・・・・」

 再確認の意味を込めて、倉野は『説明』画面を読み上げた。

「デュワール・オレンジはノエルさんの兄の一人、クリステラルドさんを捕らえ人質にしています。もちろん、バレンドット国王エクレールさんはそれを知っているのですが、自分の身内のために兵を動かすことはありません」

 さらに倉野は情報を追加する。
 クリステラルドはノエルの兄だが王位継承権は持っていないこと。正当な血筋ではないからだ。彼は前国王が側室と残した子どもの子どもである。エクレールからすると異母兄弟の息子なのだが、前国王の血を自分の知らないところに残しておきたくない、という意思で引き取った。
 しかし、幼少の頃から兄として過ごしてきたノエルにとっては、見捨てることはできない。
 デュワールやゼット商会にとって必要なのは王家の血筋。クリステラルドでは不十分なのだが、だからこそ連れ去るのは容易だった。
 その上でクリステラルドを餌に正当な血筋の者を誘き出す作戦である。ノエルはその作戦に引っかかり、デュワールに従わされていた。

「前国王の血を恨み、もとよりクリステラルドのために兵を動かすことなどしない国王。国を捨てたはずだが、兄を見捨てることができなかったノエル。デュワールとの再会を果たしてしまった以上、これは変えられない未来だったというわけだな」

 倉野の話を聞いたレオポルトは言葉を挟む。
 エクレールの性格を知っており、身内に対する冷たさを肌で感じ育ってきたノエルだからこそ、選んだ道。それは仕方なかったのだろう。
 しかし、それだけではない。クリステラルドが捕らえられているだけならば、いくらでも他の方法があっただろう。
 倉野のスキルを組み合わせて、強行突破をすることも、密かに潜入して脱出させることも可能なはずだ。
 そうしない理由があり、ノエルもそれによって大きく縛られている。

「さらにデュワール・オレンジは『ドラゴンの逆鱗』を所持しています。ノエルさんが大人しく従っている理由としては、クリステラルドさんよりもそちらが大きいようです」

 倉野がそう続けるとリオネが難しい表情で口を開いた。

「すみません、もう一度確認したいのですが『ドラゴンの逆鱗』って本当に存在するんですか?」

 リオネの問いかけに答えたのはレオポルトである。

「クラノのスキルで調べた以上、存在も効果も確かだろう。だが、リオネが疑問に思うのも当然だ。あんなものおとぎ話でしか聞いたことのない代物だからな」

 
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