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開門
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意識してその建物の前で止まったサウザンドにわざわざ理由など聞かず、一度建物を観察する。
他の建物と同じように煉瓦づくりの二階建てである。普通の家にしては大きいがギルドほどではない。横に広いというよりも奥行きがあり、総面積は広いようだ。
入口の前には看板があり、それをリオネが読み上げる。
「潮風亭・・・・・・ですか?」
リオネの呟きを聞いたサウザンドは優しく答えた。
「ええ、ここは王城に最も近い宿です。王城への来客があり必要な場合に利用しておりまして、荷物などがありましたら一度預けていただけますよ」
言いながらサウザンドの視線はレインの剣やレオポルトの刀、リオネの弓に向けられている。
王城に近づく前ならば武器を手放せ、という警告だ。柔らかい口調ながらも、案内役であるサウザンドが足を止めた以上、拒否権はない。
一瞬考えたレオポルトだったが、サウザンドの言葉は当然だと判断し頷く。
「確かに武器を装備したまま王城へ踏み入るのは失礼だな。無駄な緊張など産まない方が良い。宿を利用させてもらおう」
先にレオポルトが言葉にしたものの、倉野やレイン、リオネも同じように考えていた。ここで断る理由もない。
いや、正確には武器を持っていられるのならば持っていたいだろう。ヴェルフェールやサウザンドの正体がわからず、危険である可能性がある以上、丸腰になるのは危険だ。
しかし、わからないからこそ相手に警戒されるような行動を取るべきではないという判断をしたのである。
またその気になれば素手の倉野が最も強い。元々レオポルトも武器を持っていない戦い方をしていたし、レインやリオネにも魔法はある。この世界において全くの丸腰であることは不可能だ。
武器の有無で一つの警戒が薄まるのであれば、サウザンドの指示に従うのが得策だろう。
レオポルト、レイン、リオネはサウザンドに連れられ、潮風亭の中で武器を預けた。さらに国王エクレールへの謁見が終われば客人として宿泊できるようにサウザンドが手配する。
全てが終わると再びサウザンドは王城への案内を開始した。
「それでは改めて、こちらです」
先程話していた通り、フォンガ車では通れないほどの道を進み王城へと向かう倉野たち。
その間、レオポルトは興味深そうに道の構造を眺めていた。
「ふむ、車が通れないほどの道であるということは、一度に通れる人数も限られる。城を守るという観点からすれば理にかなっているのか。利便性は落ちるが防御力は上がる。わかっていても中々捨てられぬものだがな、利便性とは」
感心している様子の独り言を聞きながら進むと、真っ黒な王城を見上げる場所まで辿り着いていた。
大きな木製の正門があり、それすらも黒い。正門の前には王城と同じように黒い軍服に身を包んだ兵士が立っており、サウザンドが声をかける。
「開門だ」
他の建物と同じように煉瓦づくりの二階建てである。普通の家にしては大きいがギルドほどではない。横に広いというよりも奥行きがあり、総面積は広いようだ。
入口の前には看板があり、それをリオネが読み上げる。
「潮風亭・・・・・・ですか?」
リオネの呟きを聞いたサウザンドは優しく答えた。
「ええ、ここは王城に最も近い宿です。王城への来客があり必要な場合に利用しておりまして、荷物などがありましたら一度預けていただけますよ」
言いながらサウザンドの視線はレインの剣やレオポルトの刀、リオネの弓に向けられている。
王城に近づく前ならば武器を手放せ、という警告だ。柔らかい口調ながらも、案内役であるサウザンドが足を止めた以上、拒否権はない。
一瞬考えたレオポルトだったが、サウザンドの言葉は当然だと判断し頷く。
「確かに武器を装備したまま王城へ踏み入るのは失礼だな。無駄な緊張など産まない方が良い。宿を利用させてもらおう」
先にレオポルトが言葉にしたものの、倉野やレイン、リオネも同じように考えていた。ここで断る理由もない。
いや、正確には武器を持っていられるのならば持っていたいだろう。ヴェルフェールやサウザンドの正体がわからず、危険である可能性がある以上、丸腰になるのは危険だ。
しかし、わからないからこそ相手に警戒されるような行動を取るべきではないという判断をしたのである。
またその気になれば素手の倉野が最も強い。元々レオポルトも武器を持っていない戦い方をしていたし、レインやリオネにも魔法はある。この世界において全くの丸腰であることは不可能だ。
武器の有無で一つの警戒が薄まるのであれば、サウザンドの指示に従うのが得策だろう。
レオポルト、レイン、リオネはサウザンドに連れられ、潮風亭の中で武器を預けた。さらに国王エクレールへの謁見が終われば客人として宿泊できるようにサウザンドが手配する。
全てが終わると再びサウザンドは王城への案内を開始した。
「それでは改めて、こちらです」
先程話していた通り、フォンガ車では通れないほどの道を進み王城へと向かう倉野たち。
その間、レオポルトは興味深そうに道の構造を眺めていた。
「ふむ、車が通れないほどの道であるということは、一度に通れる人数も限られる。城を守るという観点からすれば理にかなっているのか。利便性は落ちるが防御力は上がる。わかっていても中々捨てられぬものだがな、利便性とは」
感心している様子の独り言を聞きながら進むと、真っ黒な王城を見上げる場所まで辿り着いていた。
大きな木製の正門があり、それすらも黒い。正門の前には王城と同じように黒い軍服に身を包んだ兵士が立っており、サウザンドが声をかける。
「開門だ」
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