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三手先

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 ここだ、とレオポルトは確信した。
 サウザンドはこちら側がどのような情報を持っているのか聞き出すために、この流れを作り出したのだろう。
 元々警戒していたため、レオポルトは不自然な素振りなど見せず、即座に答えた。

「ほう、そのようなことを気にするのか。他国で行動するためには国王の許可を得るのが礼儀というものだろう」

 レオポルトの言葉を聞いたサウザンドは、必要な情報を聞き出すことができない、と判断したのか驚くほどあっさり身を引く。

「そうですか。確かにレオポルト殿の言う通りですね。申し訳ありません、これが私の仕事ですので」
「ワシらの目的を聞き出すことが、か?」
「いえ、バレンドットを守ること、です」

 穏やかな表情で会話する二人だったが、どこか好戦的に感じる。
 そんなサウザンドの様子を見ていたリオネが小声で倉野に話しかけた。

「レオポルトさんの言葉には深掘りできる箇所があるように思えるのですが、存外引いてくれましたね」

 倉野は顎に手を置いて自分なりに分析する。

「おそらくレオポルトさんは、あえて深掘りさせようとしたんですよ。レオポルトさんにしては荒すぎる説明でしたからね。話が続けば向こうも情報を吐き出さざるを得ないでしょう」
「情報ですか?」
「えっと、例えば僕がリオネさんの好きな食べ物を聞いた時、『僕がリオネさんの好きな食べ物を知りたがっている』という情報を与えることになりますよね。それと同じようにレオポルトさんは、自分が理解力の低い男を演じることで『何が知りたいのか』『どうして知りたいのか』また『相手は何を知っているのか』まで聞き出そうとしたはずです」
「なるほど・・・・・・」

 リオネは感心したように頷いた。できればサウザンドにこちらが会話していることを知られたくないのだから、動作に出すべきではないとわかっている。わかっていても思わず頷いてしまったのだ。
 レオポルトに言わせれば倉野は妙に鋭く、妙に鈍い。腹の探り合いという独特な空気の中で鋭さを発揮したのだろう。
 さらにリオネは小声で疑問を続けた。

「じゃあ、サウザンドって人は幸運にも話を切り上げたことでレオポルトさんの作戦から逃れたってところでしょうか」
「いえ、それは違うと思いますよ」

 倉野も同じように小声で答える。
 幸運なわけがない。会話だけで他人に寒気を与えるような男が、会話を切り上げるのには理由があるはずだ。

「おそらく、サウザンドはレオポルトさんの目的を推測して会話を切り上げたんです。こちらに情報を与えないために・・・・・・」

 倉野は一度サウザンドに目をやってから「そして」と続ける。
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