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腹の探り合い

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 サウザンドという男の読めなさと、向かい合って実感した強さ。また俗にいうオーラや覇気のようなものがレオポルトにその判断をさせたのである。
 しかし、それによってわかったこともある。
 サウザンドはバジルのことを知らない、もしくは知っていてもボロを出さないということだ。
 レオポルトはサウザンドの警戒度数をさらに高く設定し、話を続ける。

「忘れてくれ、と言っても気になるだろう。バレンドットに入国したと耳にした知人の名前だ。忘れてくれて問題ない」

 誤魔化すための返答を聞いたサウザンドは少し考えるような素振りを見せてから頷いた。

「ああ、なるほど。知人を探していたということだったんですね。お力になれず申し訳ない」

 彼が見せたのはあくまでも『考える素振り』に過ぎないのだろう。相手に見せるための感情だ、と仮定してレオポルトは続ける。

「それで、そちらが聞きたいことというのは?」
「いえ、状況確認に過ぎません。まず、ノエル様とはどういったお知り合いでしょうか。私がバレンドット軍に入った頃にはもう国を出ておられましたので、あまり詳しくなくて」
「ほう、バレンドット軍は情報伝達が得意ではないということか」
「お恥ずかしい限りです」

 互いに腹を探り合っているような雰囲気は倉野にも伝わった。寒気を覚えるような論戦はレオポルトの言葉で続く。

「すまんが、ワシらはノエルがいつバレンドットを出たのかまでは知らん。出会いはそうだな、クラノやレインの方が早いはずだ」

 そう言ってレオポルトは倉野を経由してレインに視線をやる。ノエルのことを話すのならばレインだ、という判断ではなく倉野よりもレインの方が情報戦に向いていると考えたのだった。
 矛先を向けられたレインは少し間をあけてから口を開く。

「ああ、そうだったね。まぁ、そこまで大きな・・・・・・劇的な出会いではなかったよ。ノエルはバレンドットを出てから傭兵をしていたのさ。その途中で知り合った、というだけのことだよ」

 レインの言葉を聞いたサウザンドはなるほど、と頷いた。

「仕事仲間、ということですか。それでは皆さんも傭兵や冒険者なのでしょうか?」
「ああ、そうだよ。その流れで俺たちと一緒にいる時にノエルがデュワールという男に攫われたって話さ。そうなれば俺たちもある程度調べなければならない。仲間が攫われたんだから当然だね。元々、バレンドットの第三王女だって話は聞いていた。なんとか追いかけてここまで来たところ、森の中でウィローたちと出会った・・・・・・俺たちはノエルが困っているのならば力になりたいと思い、国王への謁見を申し出たのさ」

 一息にレインが説明するとサウザンドは納得したように何度か首を振る。

「質問ばかりして申し訳ない限りです。そうですか、わざわざそのためにバレンドットまで・・・・・・ノエル様は得難い仲間を・・・・・・しかし、国王様への謁見とは中々大きな話ですね。何か特別な情報でも?」
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