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最悪の状況

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「くそ! 一体どうなっているんだ」

 その報告を聞いたウィローは、全ての感情を真っ黒に塗りつぶされたかのように頭を抱える。
 報告の内容は大きく分けて三つだ。
 一つ、調査に出ていた十組全てが同時に襲われたこと。
 それは、まるでこちらの動きを読んでいたかのような強襲だった。
 二つ、その強襲によって、十人の死者が出たこと。
 三つ、襲われ、命を落としたのは全て第四部隊の兵であり、親衛隊員は全員無事に帰還していること。
 もちろん、ウィローは派遣された兵が命を落としたことにも胸を痛めている。しかし、彼を悩ませているのはそれだけではない。

「何故、どこの組も第四部隊だけが・・・・・・いや、何故というならば親衛隊員だけが無事であることの方が不自然だ」

 机を挟んでウィローの言葉を聞いていたパスカルも、深刻な表情で頷く。

「ええ・・・・・・これは・・・・・・なりふり構わず、という意思を感じます。これだけ大きな動きがあれば、こちらも総力で戦うしかない。そう推測するのは難しくないでしょうし、何のためにこんなことを・・・・・・」
「いや、ゼット商会はそれすらも想定しているぞ。考えてもみろ、今回は第四部隊の兵だけが死に、親衛隊は被害を受けていない。我々以外の人間はゼット商会と親衛隊の繋がりを疑う・・・・・・疑わざるを得ないだろう。そうなれば総力戦から我々親衛隊は外される。我々が得てきた情報の信憑性など崩れ落ちるのだ」

 ウィローはそう言いながら机を強く叩いた。発散しようのない苛立ちが響く。
 ゼット商会は親衛隊を孤立させ、これまでの調査を全て無駄にさせるため、このような強襲を行ったのだろう、というウィローの考えだ。
 そう考えると親衛隊員だけが無事だったことも理解できる。
 机を叩いた手の痛みがウィローの心を少し落ち着かせた。ゆっくり息を吸い込んだウィローはパスカルに問いかける。

「それで、生き残った隊員たちはどう話している? 目の前で殺されるペアを眺めていたわけじゃないだろう」
「は、はい。それが、どの隊員も同じような報告を」
「同じような報告?」
「ええ、調査のために動いていると、突如第四部隊の兵が消えた。周囲を捜索したところ無惨な遺体を発見した、と」

 パスカルはそう言いながら俯いた。このような状況で他の者が今の話を信じるだろうか。十組の居場所は誰にも知られていない。人気のない場所での犯行。生き残ったのは親衛隊員のみ。
 親衛隊員が第四部隊の兵を手にかけた、と考えるのが自然だろう。

「随分と周到だな・・・・・・くそ、我々にとって最悪の状況だ。とにかく俺は国王と第四部隊の隊長に報告をしなければならない。隊員は兵舎で待機させろ」

 ウィローはパスカルにそう伝えると立ち上がり、部屋を出た。
 頭の中で爆発魔法を連発されているかのように、痛みが鳴り響いている。それでもウィローは隊長の責任を果たさなければならない。
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