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ザクローの協力者

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「現在調査を中断しているとはいえ、最低限ゼット商会に大きな動きがないか確認しているのだろう? 我々の正体が国軍だと知られていたら、隠蔽や国外逃亡の動きがあるはずだ。そのような報告がないということは、バルドルイットは取るに足らない組織の潜入だったと思い込んでいる。お前の推測で大きく外れていないだろう」

 ウィローは言う。
 ここまでの情報を再確認した二人は、新たな情報を確認しあった。

「先ほどお渡しした新たな報告書の確認です。ゼット商会代表のザクローには協力者がいる、と推測できる事実がいくつか。確かにザクロー自身も非合法な仕事に関わっていたのは間違いないでしょう。しかし、ザクローが関わっていたのは、小規模な組織ばかり。少量の薬物や武器を密輸し、横流しする程度の関わりでした。今回のように戦争に耐えうるような武器の扱いは、これまでのゼット商会とは明らかに動きが違います」

 そうパスカルが説明すると、ウィローは納得したように頷く。

「そうだな、事の大きさが違いすぎる。これは目的に関係なく、国家反逆罪で極刑に処される事案だ。半端な覚悟や、稼ぎを目当てにできるようなことではないだろう。そこには何かしらの、大きな思想が存在する」
「思想ですか?」

 ウィローの言葉を聞いたパスカルが首を傾げた。
 
「ああ、思想だ。俺たちがバレンドットのために命をかけているのも一種の思想だろう。そこには己の正義が存在する。今のゼット商会にはそういった、執念に近いような思想を感じないか? 命をかけて行う何か、だ」

 そう話すウィローの言葉にはひどく説得力があった。それはウィロー自身が思想による行動力の強さを知っているからかもしれない。
 理解したパスカルは気を引き締められるような気持ちになる。

「確かにそうかもしれません。目的の調査は最優先で行います」
「ああ、話を中断して悪かった。報告を続けてくれ」
「はい、ザクローに協力者がいると推測できる事実の確認ですね。そもそもゼット商会は国外での協力者が少なく、他の荷物運び業者との繋がりも薄かったはずです。今回のように周囲を巻き込んだ作戦には多くの協力者、そして繋がりを要します。その二つを持ち込んだ者がいるはずです。さらに、元々ゼット商会に所属していた者以外の姿が数名確認されました。いずれも傭兵のような風貌をしていた、と。追加調査の結果、他国から流れ込んできた腕利きの傭兵だと言うことがわかりました。これがその一覧です」

 言いながらパスカルは新たな書類を並べた。それはリストではなく、似顔絵が描かれた手配書である。
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