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ウィロー、覚悟する

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 パスカルの言葉を聞いたウィローは眉をひそめる。

「犯罪スレスレどころか、真っ黒だな。国が禁止している薬物を国王親衛隊が扱うとは」
「国家反逆、もしくは他国への侵攻の可能性があるのであれば、何を利用してでも相手を暴く。それが隊長の指示でしたので」
「ああ、それでいい。だが、相手は我々の想像よりも本気だったということだ。バルドルイットはその正体を暴かれ、殺された・・・・・・ということか」

 ウィローがパスカルに訊ねた。するとパスカルは血が滲みそうなほど拳を握る。

「・・・・・・はい。ただ殺されたのではありません、バルドルイットの遺体には多数の拷問の跡が・・・・・・しかし、隊長バルドルイットは我々の不利益になるような情報を吐いたりはしません。奴の舌には自分で噛み切ろうとした形跡がありました。決して!」
「分かっている。俺の部下にそのような者はいない」

 言いながらウィローはパスカルに優しい表情を向けた。自分の相棒が国のために生き、国のために死んだこと。バルドルイットが自分の命を惜しみ、国を売るようなことをしていないと理解されたことでパスカルは、少し救われたような気持ちになる。
 バルドルイットの死によって、ウィローたちは追いかけている何者かが、目的のためなら手段を選ばないのだと知った。
 こちらも手段を選んでいる場合ではない。潜入捜査や影からの調査では、その真実に辿り着くことなどできないだろう。できたとしてもまた犠牲を重ねることになるかもしれない。
 覚悟を決めたウィローは国王エクレールに全てを報告し、国を挙げての捜査に乗り出すことを進言することにした。

 バルドルイットの遺体発見の翌日、ウィローはエクレールの部屋に訪れた。この部屋は選ばれた者しか入ることができない。国王親衛隊隊長であるウィローはその内の一人だった。

「それで話とは?」

 ベッドに座ったままのエクレールが問いかける。
 するとウィローは敬礼を終わらせてから口を開いた。
 
「ご報告がございます」

 彼は全てを話した。バレンドットに大量の武器が流れ込んでいること、小さな武器だけでなく攻城兵器のような戦争を想定したものまで意図的に買い付けていること、その正体がわからぬよう隠蔽されていること、その調査の途中でバルドルイットが死んだこと。
 ウィローの話を聞いたエクレールは、ゆっくりと頷く。

「そうか・・・・・・苦労させたな、ウィロー」
「私の勝手な判断で部下を死なせた責任は必ず・・・・・・ご報告が遅れたのは」
「噂話を私に報告するわけにもいくまい。その真実を探ろうと努めていたのだろう。お前に責はない。お前はお前の役目を果たしただけだ」

 
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