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軍人の矜持よりも重い

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「ウィローさん!」
「隊長!」

 ウィローの仲間たちが振り下ろされたレインの剣に向かって叫んだ。
 しかし、当のウィローは微動だにせず全てを受け入れる。それが自分の役目であるかのようだった。
 刃を体に受け入れる覚悟を持っていたウィローだったが、いつまで経っても痛みを感じることはない。
 それもそのはずである。レインの剣はウィローの体に触れることなく彼を縛っているロープだけを切り裂いた。

「・・・・・・どういうつもりだ」

 自由を取り戻したウィローは喜ぶどころか不満げな表情を浮かべる。
 もちろんレインの行動には意味も理由もあった。

「もう俺たちが争い合う理由なんてないってだけさ。俺たちはその反乱を止めるためにバレンドットへと向かっていたんだからね」

 言いながらレインは剣を鞘へ収める。その言葉だけでは真意など理解できるわけもなくウィローは警戒を継続しながらレインに問いかけた。

「反乱を止める・・・・・・だと。どうして反乱について知っている。いや、そもそも何故、バレンドットに関係のないお前たちが反乱を止めようと・・・・・・」
「まずは君から全てを明かすべきじゃないか。これまでの言葉から多少察することはできるが、ここからの話には歪みのない正しい認識が必要だよ」

 レインにそう言われたウィローは湧き出る疑問を飲み込んで口を開く。

「・・・・・・我々とお前たちにの間には何が起きているのか理解できないほどの戦力差が存在する。たとえ束縛するものがなくなっても命を握られていることは承知だ。だが俺は人である前に軍人・・・・・・軍人とは生きて不利益をもたらすのであれば死を選ぶものである。俺に生きるべきかどうか判断できる情報をくれないか」

 同じく軍人であるレインには彼の気持ちが理解できた。同じような状況であれば自分も死を選ぶだろう。命を握っているレインと情報を握っているウィロー。倉野のスキル『説明』を知らないウィローにとっては自らの命をかけた発言である。
 彼の瞳から信念を読み取ったレインは己の判断でウィローが納得できるだけの情報を明かした。

「ノエル・マスタングを知っているね? 俺たちは彼女の仲間だ。ノエルを救うためなら俺たちは命を捨てるよ。それは国のために死を選ぶ軍人の矜持よりも重い」
「ノエル様の・・・・・・まさかノエル様が巻き込まれて・・・・・・いや、正式血統であるノエル様を担ぎ上げなければ国民の支持は得られないということか」

 驚くほどすんなりと納得したウィローは頷いてから言葉を続ける。

「まずこれまでの非礼を詫させてくれ。そして、このウィロー・ジマリドはバレンドット国王の名に誓い真実を語る」

 そして彼の話は一年ほど前に遡った。
 それはバレンドット国王でありノエルの父であるエクレールの苦悩から始まる。
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