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三つの違和感

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 スタスタと二人の足音が響いた。ノエルとデュワールの背中が遠のいていく。
 倉野たちはバレンドットの手前でノエルを取り返すことはできなかった。
 それもノエル自身によって拒絶されたのである。
 道はここで途絶えたかに見えた。少なくともレインはそう考え、小さくなっていくノエルの背中を見つめている。

「ノエル・・・・・・」

 しかし、見えるものだけが真実とは限らない。また立場や能力によって見えるものも違う。

「レイン、今は堪えろ」

 レインに歩み寄りながらレオポルトが諭すように話しかけた。
 そんなレオポルトの意図がわからずレインは首を傾げる。

「何故俺を止めようとするんだい。ここでノエルを行かせてしまったらバレンドットの中に消えてしまう。そうなれば簡単には追いかけられない」
「落ち着け、レイン。ワシにも他国で自由に動けないことくらいわかっている。それでも動くのは今じゃない」

 レオポルトがそう説明したもののレインは理解できない様子だ。

「今、この瞬間に行動するため俺たちはここまで来たはずだろう。今じゃなければ一体・・・・・・」

 出来ないのは理解だけではない。レインは納得もしていないようだ。
 しかしレオポルトは至って冷静に言葉を返す。

「言葉ではなく、言葉にしていない部分を読み取れレイン。ノエルはワシらの強さを知ってる。誰よりも知ってるはずだろう。そして今、ノエルの隣にいるのはデュワール・オレンジだけだった。もしもノエルを縛っているものがデュワールだけならばワシらに助けを求めたはず。そうしなかったのには理由があるのだろう・・・・・・縛られているのはノエルだけではないのかもしれない。縛っているものはデュワールだけではないのかもしれない。今、ワシらが動くことを望んでいないのだ」
「つまりまだ時ではないと・・・・・・」
「ああ、そうだ。それにクラノたちも何かに気づいたようだが」

 そう言いながらレオポルトは倉野に視線を送った。レオポルトに話を求められていると気づいた倉野は頷いてから口を開く。

「はい、ノエルさんが最後にボソッと呟いた言葉です。僕たちにできる事はないと言い切った直後にこう呟いていました。今は・・・・・・と」
「今は?」

 レインが聞き返すと倉野は再び頷いた。

「ええ、僕にだけ聞こえるような声量でした」

 倉野の言葉に続きリオネも身を乗り出す。

「それにノエルはあえて先を急ごうとしていました。私にここから立ち去るよう忠告していたんです。デュワールがクラノさんの情報を得る前に離れようとしたのではないでしょうか。最も危険視しているのはクラノさんのはずですから」

 それぞれの違和感から導き出される答え。その全てがノエル側に何らかの事情があることを示していた。
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