異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬

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海の向こう

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 朝になると見張りをしている倉野のもとに全員が起き出してきた。
 軽い朝食を食べると簡易テントを解体し、野営の痕跡を消す。
 環境への配慮もなくはないのだろうが、自分たちの足取りを追わせないための癖だとレインやレオポルトは語った。
 戦場ではこのひと手間が生死を分けるという。
 片付けが終わると倉野たちはバレンドットに繋がる橋へ向けて再び歩き出した。
 時折地図で確認しながら森の中を進んでいく。

「それにしても広い森ですね」

 どれだけ進んでも森を抜けることができず、リオネがそう呟いた。
 するとレオポルトが地図を確認しながらそんなリオネに声をかける。

「そう心配するな、確実に前に進んでいる。同じ景色が続いていると進んでいないのかと錯覚するのはわかるがな。その証拠に生えている植物の種類が変わってきただろう。森の中心部とは環境の違いが出ているのだ」

 そう言われたリオネは周囲を確認し確かにと頷いた。
 陽の光の強さや温度、湿度が影響しているのだろう。
 
「本当ですね。じゃあ、もう森を抜けるってことでしょうか」
「ああ、その通りだ。しかし・・・・・・」

 リオネの問いかけに答えたレオポルトだったがその表情はどこか厳しい。
 何か引っかかることでもあるように感じる。
 そう気づいた倉野がレオポルトを呼びかけた。

「レオポルトさん? どうかされましたか?」
「いや・・・・・・あくまで気がすると言うだけだ。何か確証があるわけではないという前提だが、どこか寒気を感じる。嫌な予感とでも言うべきかな」
「嫌な予感・・・・・・森の重い空気とは違うものでしょうか?」

 倉野が聞き返すとレオポルトは首を横に振る。

「どう表現すればいいんだろうな。肌がピリピリするような感覚・・・・・・そう、戦場にでもいるかのように錯覚する感覚だ」

 獣人であるレオポルトは人間よりも全ての感覚が鋭い。倉野たちよりも早く、強く何かを感じているのだろう。
 それでも足を止めるわけにはいかずそのまま森の中を進んだ。
 段々と陽の光が強くなり、もう森を抜けるというタイミングでレインが自分の額に流れた汗に気づく。
 まるで自分の体が何かに恐れているかのような冷や汗だ。
 嫌な空気を感じ始めているのだろう。しかしレインは何も言わずに前に進み続けた。
 そこからしばらく進むと道の先に強い光が現れ、遂に森を抜ける倉野たち。
 達成感を感じながら地図を確認すると目的の橋まではもう少しだった。

「こっちだ」

 レオポルトが方向を指示する。
 地平線の向こうには海があり、そちらに向かって進む道だ。
 さらに海の向こうにはノエルの故郷バレンドットが存在する。
 ようやく見えた海を眺め、レインが切なげな表情を浮かべた。
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