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夜、森の中

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 その後、野営に必要な食料やテントにするための布などを購入した倉野たちは再びバレンドットの方に向けて出発する。
 森側にも町の出入り口があり、そこから森に入るのだ。
 一歩森に足を踏み入れるとどことなく涼しく感じる。ホロフジスタンの木材は良質と言われているだけあって立派な大樹が並んでいた。

「どこか不気味な雰囲気ですね」

 森の中を歩きながらリオネが呟く。
 確かに、と思いながら倉野は頭上に視線を送った。大樹の枝葉が陽の光を遮りまるで洞窟の中にでもいるかのようである。
 倉野が元いた世界にこんな森があれば『緑の洞窟』とでも呼ばれていたかもしれない。
 森の中には木を切り出し運搬するための道があり、どうやら倉野たちが目指している場所まで続いているようだ。ひたすらその道を進んでいく。
 肌に張り付く湿気を感じながら進んでいくとうっすら差し込んでいた光が橙色に染まり始めた。

「もう夕暮れか・・・・・・これ以上暗くなれば進むのも困難になるだろう。今日はここで野営をするか」

 枝葉の隙間から空を見上げレオポルトが全員に話しかける。
 チャンスだ、と言わんばかりに倉野は口を開いた。

「ここをキャンプ地とする! ってことですか?」
「きゃんぷ? 何を言っているんだ?」
「いえ、何でもないです」

 冷静に聞き返してきたレオポルトにそう答えると倉野は少し恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。
 倉野が好きだったテレビ番組の話など通じるわけもないのだから当然だ。
 そんな倉野の言葉など気にせずレインは町で購入した布を広げ、周辺に落ちていた丈夫な枝を組み合わせ簡易テントを作り上げる。
 
「ほう、手慣れたものだな」

 感心したレオポルトが讃えるとレインは軽く微笑んだ。

「ははっ、軍の遠征では様々な経験をしたからね。森の中で野営することだって多かった。大きな布さえあればこれくらい簡単だよ。無ければ葉っぱで代用する時もあるくらいさ」

 そう言いながらレインはテントの中に座り込む。
 その間にリオネは乾燥した小枝と大きめの石を集め簡単な釜戸を作っていた。野営の知識がない倉野はリオネを手伝い小枝を拾うだけである。
 慣れている軍人や冒険者に手際で勝てるわけもない。
 準備が終わると簡単な夕食を作り、食べ終わるとテントの中で休む。
 もちろん森の中で野営をするのだから周囲への警戒を怠るわけにはいかない。一人ずつ交代で見張りをすることになった。
 最初の見張りはレインである。
 
「じゃあ先に休ませていただきますね」

 倉野がそう言ってテントに入ろうとするとレインは少し楽しそうに笑った。

「こうしているとクラノと出会った時のことを思い出すよ。無人島での野営をね」
「あれも野営って言うんですか?」
「正しくは漂流かな」

 そんな会話を終え、倉野はテントの中で寝転ぶ。
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