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連載

フォンガギルド

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 倉野たちがホロフジスタンに着いてからおよそ半日。
 未だ先の見えない草原を歩き続けていた。
 道と呼べるものはなく、本来は地図と方向を感覚を頼りに進むべき場所なのだが、クラノのスキルによって迷うことはない。
 
「こうやって歩く時間が長いとフォンガ車のありがたさを再認識しますね」

 歩きながら倉野がそう言葉にするとリオネが額の汗を拭いながら微笑む。

「ふふっ、話を聞く限りクラノさんはフォンガ車に乗る機会が多かったようですもんね。私たち冒険者の移動は基本的に歩きですよ。本来フォンガ車は荷物の多い商人や貴族が乗るものです。冒険者が依頼のたびにフォンガ車に乗っていたら利益がなくなってしまいますよ」
「あー、そりゃそうですよね。冒険者ギルドでフォンガ車を所持していれば全員で使い回すこともできるでしょうし、使用料も安く済みませんか?」

 ふと思いついたことを倉野が口にするとレオポルトが言葉を挟んだ。

「それは効率的な考え方だな。しかし、フォンガは人に対して友好的とはいえ魔物だ。その管理は素人にできるものではない。フォンガの中でも穏やかな個体同士に仔を産ませ幼体を育てる必要がある。その上で人に慣れさせつつ車を曳ける用に仕込むのだ。それは簡単なことではない。人の言葉もある程度理解できるようにしなければならないからな。そしてそれを専門とする組織『フォンガギルド』というものが存在する。もし冒険者ギルドがフォンガの育成に成功したとしてもフォンガギルドが反対するだろうな」
「そっか、そうするとフォンガギルドの利益が減ってしまいますもんね。でも、もっとお互いが得をする方法があるような気がします」

 レオポルトの説明に対して倉野がそう答えると次はレインが口を開く。

「クラノの言っていることは正しい。けれど、組織ってのは新しい形を嫌うものなのさ。冒険者ギルドもフォンガギルドもそれぞれ独立した組織としてここまで大きくなった。今更手を取り合うことなんてできないんだろうね。いや、それは国同士も同じだよ。大きくなればなるほど他のものと混じり合うことを恐れてしまうのさ。挑戦して失敗するくらいなら現状を維持したいというのが本音だろうね」
「現状維持は緩やかな衰退と一緒じゃないですか」

 倉野がそう返すとレオポルトが嬉しそうに笑みを浮かべた。

「ふっ、お前さんはたまに鋭いことを言うな。だからこその『ピース・リンク』であり『世界連盟』なのだろう。世界が緩やかに衰退しないためにワシらが動き出したのだ。そしてワシらにはノエルが必要だ・・・・・・先を急ごう。ほら、目的の町が見えてきたぞ」

 言いながらレオポルトは前方を指差す。
 そこには左右に広がる木製の柵が設置されていた。その奥には小さな木造建築が建ち並んでいる。
 野営に必要な物資を購入しようと言ってた町だ。
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