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飛行船個室にて

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 レインが集まっている人の行き先を説明するとレオポルトは納得したように頷いた。

「ああ、なるほどな。もうそんな時期か」
「ベリジルって南の方にある国ですよね。この時期に何かあるんですか?」

 リオネが問いかけるとレオポルトはさらに言葉を続ける。

「この時期になるとベリジルではカーニバルが開催される。世界中から人が集まり、昼も夜もなく騒ぎ立てるんだ。参加したことはないが世界中から人が集まるため、大使いる時期は動向を気にしていたな。カーニバルでは人も金も大きく動く上に楽しげな雰囲気で気が緩む。そういった催しで事故や事件が増えるのは言うまでもない。まぁ、もうワシには関係のない話だがな、カーニバルを理由に一日中酒を飲めるのならば参加するのも悪くないか」

 そう言いながら自分の唇を舐めるレオポルト。酒の話をしただけで飲みたくなってしまったのだろう。
 ベリジルの話が終わると倉野たちはレインの指差した飛行船に向かった。もう乗船できるのであれば、早めに乗っておくほうがいいという判断である。
 飛行船には簡易的な階段が設置されており、その近くには乗船手続きをする男性が立っていた。
 レインがその男性に話しかけ、乗船手続きを終えるとそのまま飛行船の中へと案内される。
 飛行船に乗り込むと中は宿屋のように幾つかの個室に分かれていた。長時間の飛行となれば飛行機のように客席に座って待っていられないということだろう。リクライニング機能もなくクッション性の低いこの世界の椅子では長時間座っていることに耐えられない。
 倉野たち四人は広くも狭くもない個室に通され、離陸するまでこの部屋から出ないように言われた。
 個室にはベッドが三つと大きめのソファがあり、窓から外の様子も確認できる。
 各々荷物を下ろした後、ベッドに座って一息ついた。

「思っていたよりも快適そうだな」

 無駄に長い足を組みながらレオポルトがそう話すとリオネが微笑んで返す。

「そうですね。まさか個室とは・・・・・・」
「どうした、リオネ。ワシらと同室なのが気になるか?」

 レオポルトが問いかけるとリオネは首を横に振った。

「いえ、冒険者をしていれば野営することもありますし、男性と同室であることも多いので気になりませんよ。それよりも個室で休んでいれば目的地に到着するなんて自分が貴族になったようで」
「ああ、なるほどな。確かにこの飛行船の乗船料金は貴族や大商人でなければ払えないような額だ。贅沢な移動手段だと言えるだろう」
「こんな状況でなければ精一杯楽しみたかったです」

 言いながらリオネが肩を落とすとレインが優しく微笑む。

「それは違うよ、リオネ。俺たちが苦しむことをノエルは願っていないはずさ。今は英気を養い、来たるべき時に備えればいい」
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