異世界で俺だけレベルが上がらない！ だけど努力したら最強になれるらしいです？

連載

ノエルの居場所

　それを聞きレインは頬を打たれたような気持ちになった。
　相手が信じてくれていることを信じる。それこそがあるべき愛の形ではないのかと気づいたのだ。

「そうか・・・・・・レオポルトさんの言う通りかもしれないな。それが信じるってことだね。ふっ、俺としたことが動揺から我を忘れてしまっていたよ」
「お前さんの立場であればワシも冷静ではいられなかっただろう。お互いに支え合い背中を押し合う・・・・・・ワシらは仲間なのだから」

　言いながらレオポルトは口角を上げる。
　二人の会話を聞いていた倉野は『仲間』という言葉に背中を押され、ベッドから立ちあがった。

「クラノ、立って大丈夫なのか？」

　心配して手を差し伸べるレオポルト。その手を素直に握り倉野は頷く。

「ありがとうございます、レオポルトさん。まだ体に違和感はありますが寝ていられませんよ。ノエルさんに救われた命・・・・・・助けられっぱなしではいられません。僕はノエルさんを追いかけます」

　倉野がそう語るとレオポルトが嬉しそうに微笑んだ。

「お前さんならそう言うと思った。もちろんワシも行くぞ」

　その言葉にレインとリオネも続く。

「もちろん俺もさ」
「私もノエルさんに感謝を伝えたいです」

　簡単に帝都を離れられないグランダー伯爵やレイチェルも気持ちは同じだ。

「ノエル殿は『ピース・リンク』に欠かせない人物です。必ず連れ戻してください」
「可能なら私も同行したいのですが、私では足手まといになってしまうでしょうから・・・・・・皆様の無事をここで祈るしかできません。ですから必ず無事に帰ってきてください。ノエルさんも一緒に」

　伯爵とレイチェルの言葉を聞いた倉野は強く頷き、右足を踏み出す。心の中は『ノエルを連れ戻す』という強い気持ちで燃え盛っていた。

「早く行きましょう！」

　そんな倉野にレオポルトが優しく問いかける。

「クラノ、熱くなっているところに水を差して悪いのだが一体どこへ向かうつもりだ？　ノエルの行き先はお前さんにしかわからんぞ」
「あ・・・・・・そうでした」

　何も考えずに感情だけで動き出そうとしていた自分が恥ずかしくなり、倉野はその場で足を止めた。雰囲気に飲まれ少年漫画の主人公のような気持ちになっていたのである。
　落ち着いた倉野は素早くスキル『説明』を発動し、ノエルの現在地を調べた。
　表示された画面には『エスエ帝国の南部。ジアージョ』と書かれている。
　倉野がそれを読み上げると伯爵は少し難しそうな表情で口を開いた。

「ジアージョですか・・・・・・やはりノエル殿はエスエ帝国を出ようとしているかもしれません。ジアージョには飛行船の発着場があり、目的地は他国ですから」

　それを聞いた倉野たちは余計に急がなければという気持ちにが強くなる。
　スキル『説明』があればどこにいても見つけることは可能だ。しかし飛行船に乗られてしまうとその間は追いつくことなどできないだろう。
　
「急がないと」

　倉野がそう呟くとシラムが全員に声をかけた。

「少々お待ちくださいませんか。すぐにフォンガ車を用意いたします。走るよりもよっぽど効率的ですよ」

　そう言って部屋を出るシラム。