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葉っぱの正体

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 理不尽にしか思えないジェルジュールの要望だが、今は彼の知識と経験に頼るしかない。
 伯爵とレオポルトは呼吸音どころか心拍音にすら気を遣い見守る。
 しばらく見守っているとジェルジュールは伯爵に羊皮紙と羽ペンを求めた。慌てて伯爵が手渡すとジェルジュールは何かを書き始め、納得したように頷く。

「うん、これしか考えられない。あとはここからどう絞っていくか・・・・・・ですが、それについては現地調査をしなければどうにも。文献には曖昧なことしか・・・・・・いや、しかし乾燥方法に微妙な違いがあるかもしれない。やはり現地調査でしょうか」

 そう話すジェルジュール。その言葉から今この場ではわからない何かがあるのだと判断した伯爵は恐る恐る問いかけてみた。

「ジェルジュール氏。つまり、その葉っぱの正体はわからないということでしょうか?」

 するとジェルジュールは馬鹿なのかと言わんばかりの無礼な表情で答える。

「何を言っているんですか? 私がわからないと申し上げているのは明確で詳細な産地です。葉っぱの正体についてはそちらのビスタ国出身の獣人レオポルト氏に匂いをお聞きした時点でわかっています。しかし、私としては産地を特定できていないことが許せません。それまでは全てを理解したとは言えませんからね」

 一瞬ジェルジュールが何を言っているのか伯爵にもレオポルトにも理解できなかった。
 その言葉の中に『わからない』と『わかっている』が混ぜられていること、まだジェルジュールが不満そうであることが理解を邪魔したのである。
 しかし次の瞬間には『葉っぱの正体についてはわかっている』という言葉だけが頭に残り、二人揃って驚いた。

「えっ、葉っぱについてはわかっているんですか?」

 驚きながらも問いかける伯爵。
 するとジェルジュールは当然だと言わんばかりに頷いた。

「ええ、もちろんです。私はジェルジュール・コヒナタですから。しかし、明確な産地がわからないと理解したと」

 そこまでジェルジュールが言葉にしたところでレオポルトが彼の肩を強く掴む。

「産地なんて曖昧でいい。とにかく葉っぱの正体を教えてくれないだろうか」

 突然詰め寄られたジェルジュールだったが冷めたような目でポカンとしていた。どうやら産地を知らなくてもいいという思考が理解できないらしい。
 そんなレオポルトを止めるように伯爵が彼の手を掴む。

「レオポルト殿、気持ちはわかりますが落ち着いてください」
「あ、ああ。そうですな。申し訳ない」

 そう言ってレオポルトがジェルジュールの肩を離すと、伯爵は優しく微笑んだ。

「今は少しでも情報が必要なのです。ジェルジュール氏にとって詳細な産地が必要なように我々にとってはいち早く正体を知ることが大切・・・・・・どうかご理解いただけませんか?」
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