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言葉の真偽

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 どうやらレインはどれだけ考えても仲間が倉野を殺すという考えに至らなかったらしい。
 レオポルトはそんなレインの気持ちを察するように頷き口を開く。

「ああ、ワシもそう信じたい。ただ、状況的に可能性があるというだけだ」
「可能性がある・・・・・・か。レオポルトさんがこうやって動いているんだ、他殺であるならば外部よりも内部に犯人がいる可能性が高いってことなんだろうね。むしろその可能性を潰すために動いているんじゃないかい?」
「・・・・・・そうかもしれんな」

 言葉にされたことでレオポルトは自分の気持ちに気付かされた。
 倉野がグランダー伯爵邸にいること、あの部屋に泊まっていること、屋敷に侵入しなければ犯行を行えないこと、屋敷への侵入は容易ではないこと。様々な情報を整理すると内部班である可能性が高い。
 そんな考えにたどり着いてしまったレオポルトは犯人を探すために行動していたつもりだった。しかし、本当は仲間を疑いたくなどない。
 聞き取り調査をすることで仲間に犯人がいないと信じたかったのだ。
 自分の真意に気づいたレオポルトは少しすっきりした表情で微笑む。

「感謝するぞ、レイン」
「ん? 何を感謝してくれているのかはわからないけれど、楽しそうにしている方がレオポルトさんらしい。俺もこのまま立ち止まっている場合じゃないかもしれないな。俺が何もできなくなればクラノは自分を責めるだろう。俺の方こそ、レオポルトさんに感謝したいさ」

 そう言ってレインはレオポルトに手を差し伸べた。レオポルトはその手を握り返して頷く。

「ああ、ワシらがすべきことはクラノに恥じぬ行為だ。奴が繋いだ縁を離しはせんぞ」

 レインと強めの握手を交わしたレオポルトは再び礼を言い彼の部屋を出た。
 新たに得た情報はほとんどない。しかし、何のために行動するのかが明確になったことで真実に向かう勇気を得ていた。
 仲間が犯人ではないと確証を得るために調査するのである。
 次は誰の部屋を訪ねようかと考えてからレオポルトは少し眠そうなツクネに話しかけた。

「確かフェレッタは人の感情を読み取ることができるんだったな。ツクネ、お前さんから見てレインの言葉に嘘はなかったか?」

 もちろん本気で疑っているわけではない。レインを信じるための確認だった。
 ツクネから良い反応が返ってくれば何も憂うことはなく信じられる。それだけだった。
 しかし、レオポルトの理想とは違いツクネは困った表情で首を傾げる。

「クー?」

 曖昧な反応だ。肯定も否定もしていないが、どちらかといえば否定的なのだろう。

「どうしたツクネ。嘘があったのか?」
「クク」

 ツクネは首を横に振った。
 
「では、全ての言葉は真実だったか?」
「クー?」

 ツクネは首を傾げる。
 嘘はなかったが真実とまでは言い切れない、といったところか。
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