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その男、猫につき

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 レオポルトはそう言って廊下にある窓の外を眺めた。倉野が泊まっている部屋は屋敷の二階。窓のすぐ外には庭園が広がり背の高い木も生えている。

「ふむ」

 外の状況を確認してからレオポルトはこう立案した。

「扉を壊す前に窓から中の様子を確認すべきだ。その上で異変を感じれば窓を突き破って部屋に入る。もちろんグランダー伯爵の許可は必要になるがな」

 倉野に何が起きているのかわからない以上、無理やり扉を開けることはできない。外から様子を確認し窓から入るのであれば大事になる可能性は低いだろう。
 レオポルトからの提案を受け、レイチェルはすぐに強く頷いた。

「そうしましょう。お父様の許可を待つまでもありません。クラノ様に何かあったのだとすれば確認する時間も惜しいですから」
「ふっ、クラノのことになると・・・・・・いや、そうだな。少しそこで待っていてくれ」

 そう言い残しレオポルトは近くの窓を開く。
 何をするのかと思えば、窓枠に右足をかけて勢いよく飛び出していった。

「レオポルトさん!」

 思わず呼びかけたリオネだったがレオポルトの体は重力に従い落下していく。
 繰り返して言うがここは二階だ。一階の天井が高いこともあり、地上まではかなり遠い。人を縦に積み重ねていっても八人ほど必要になる高さである。
 リオネとレイチェルは慌てて窓から身を乗り出して地上を確認した。
 するとレオポルトは体の筋肉をバネのように使い、綺麗に着地している。何も心配など必要なかった。流石は世界に名を馳せた最強の一人『血煙の獅子』といったところ。
 着地を決めるとレオポルトはリオネたちに手をあげて呼びかける。

「心配するな。この程度の高さで怪我などせん! じゃあ、様子を見てくるからな」

 そう言い残すとレオポルトは倉野がいるはずの部屋を外から探した。
 先ほど飛び出した窓の位置から察するにここだろうという場所を見つけ、近くの背の高い木に近寄る。
 
「これは丁度いい。さてと」

 呟きながらレオポルトは両足に力を溜めた。彼がどのように筋肉を使っているのかはわからない。あえて例えるならば、それはまるで空気圧で爆発する容器のように一気に彼の体は飛び上がった。
 これこそが獣人の身体能力なのだろう。
 目的の窓と同じ高さまで飛び上がるとレオポルトは先ほど見つけた木に強い蹴りを放った。上への飛び上がる力を横向きに変換したのである。
 忍者のような動きで窓に近づくと、ロッククライミングの容量で窓枠に指をかけてその場で停止した。
 顔に似合わぬ猫耳を生やしたレオポルトだが、この動きを見れば誰もが猫のようだと思ってしまうだろう。
 ともかく目的地に到達したレオポルトは窓から部屋の中を覗き込んだ。
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