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そこにある何か

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 すると扉の向こうから聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。

「クク!」

 まるで何かを訴えかけているように聞こえる。
 そんなツクネの声を聞いたレイチェルは訴えかけに応えるよう扉を押した。
 しかし、リオネが言っていたように扉は開きそうにない。本当に鍵がかかっているようだった。
 
「あれ、本当に開かないですね。鍵なんてあるはずないのに」

 一応確認するがもちろん扉には鍵穴など存在しない。
 レイチェルが首を傾げているとリオネが扉に近づき一緒に押してみる。

「えいっ」

 それでも扉は開こうとしない。
 女性二人の動きを見ていたレオポルトはほんの少しだけ扉が動いたことに気づいた。

「ちょっと待ってくれ、若干だが扉が動いたような気がするぞ」
「え?」

 リオネが手を止めて聞き返すとレオポルトは少し考えてから再び話し始める。

「おそらく鍵がかかっているのではない。扉の向こうに何かが置かれているのだろう。それによって鍵がかかっているように感じているだけだ」

 そう言われると確かに若干だが扉が動いたような気もするし、何かが置いてあるような気もした。
 レイチェルもリオネと同じように手を止めてから口を開く。

「うーん、確認のために呼びかけてみましょう。クラノ様? 部屋におられますか? クラノ様」

 倉野を呼ぶレイチェル。
 もちろんと言うべきか、中からの反応はない。
 一度レオポルトたち三人は顔を見合わせてどうするべきか話し合う。
 最初に口を開いたのはリオネだった。

「どうしましょう、三人で思いっきり押してみましょうか? レオポルトさんがいれば何かが置いてあっても押せるような気がします」

 リオネの提案にレイチェルが頷く。

「そうですね。扉に関しては壊れてもシラムが直せますので問題はありません。家具もまた然りです」

 思っていたよりも行動的な発言をするレイチェルに驚きながらレオポルトが言葉を返した。

「お、おお、中々力任せの案だな。それと扉まで直せるシラム氏の優秀さに驚くばかりだ。しかし、無理やり開けるのは賛成できん」
「どうしてですか?」

 リオネが問いかけるとレオポルトは大袈裟なジェスチャーを交えて説明する。

「このような状況になった原因は幾つか考えられる。クラノがあえて家具か何かで扉を塞いでいる可能性。何者かが扉に細工をした可能性。しかしその場合はクラノからの返答がないのはおかしい。その二つの可能性も捨てきれぬが、最もあり得るのはクラノ自身の体が扉を塞いでいるという線だ」
「クラノさんが?」
「ああ、その場合、クラノは意識を失っている可能性が高い。何が原因で意識を失っているのかはわからんが、頭を強く打っている場合動かすのは危険だ。状況がわからない以上、細心の注意を持って行動するべきだろう」

 
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