上 下
512 / 729
連載

妙な音

しおりを挟む
 リオネの声に気づくとレイチェルは立ち上がって呼びかけた。

「おはようございます、リオネさん。どうかされましたか?」

 問いかけられるとリオネは少し困った表情を浮かべてからこう答える。

「えっと、私の気にし過ぎかもしれないのですが、クラノさんの部屋から妙な音が聞こえてきて」
「妙な音?」

 レインが首を傾げながら聞き返した。
 するとリオネは爪を立てるような仕草をしながら返答する。

「壁を引っ掻くような、ガリガリという音が響いてきたので、ドア越しに声をかけたのですが何も反応がなくって」
「もし眠っているだけだとしても妙な音は気になるね。少し様子を見にいってみるかい?」

 レインは立ち上がりながら優しく語りかけた。
 するとリオネは再び困ったようにこう話す。

「いえ、どうしても気になって扉を開けてみたのですが鍵がかかっていて」
「鍵?」

 そう反応したのはレイチェルだった。
 どうやら鍵という言葉に引っかかったらしい。それもそのはずだ。
 その理由をレイチェルが語る。

「確かに内側から鍵をかけられる部屋もこの屋敷にはあります。例えば客室に泊まっていただいている皆様のお部屋には鍵がついております。ですが、クラノ様は一人でもお泊まりいただいていた関係上、客室ではなく空いていたお部屋に宿泊してもらっています。ですので、クラノ様のお部屋には鍵はついていないはずですよ」

 そう言いながらレイチェルは首を傾げた。
 その言葉を聞くとリオネも同じように首を傾げる。

「え? それじゃあ、どうして扉が開かなかったのでしょう?」

 お互いに顔を見合わせるリオネとレイチェル。
 そんな二人の間に割り込むようにレオポルトが口を開いた。

「ここで話していても仕方あるまい。どうだ、何人かで様子を見にいこう。そうだな、気になっているはずのリオネとレイチェル殿についてきてもらおうか。レインとノエルはここに残り、伯爵が来られた時の説明を頼む」

 レオポルトがそう依頼するとレインとノエルは即座に了承する。

「ええ、わかったわ」
「何かあったらいつでも呼んでくれ」

 話が決まれば即行動。そんな信条を抱いているレオポルトはすぐにリオネとレイチェルを引き連れて大広間を出た。
 そのまま三人は倉野が宿泊している部屋に向かう。
 部屋の前までくると確かに中からガリガリと何かを引っ掻くような音が聞こえてきた。

「これか。確かに妙な音だな。おそらくだが、獣が爪を立てている音だろう」

 レオポルトがそう推察すると、レイチェルが扉に近づいてしゃがみ込む。何をするのかと思えば、扉に向かって優しく話し始めた。

「そこにいるのはツクネちゃんですか?」

 そう彼女はこの音を出しているのがツクネであると推測し、高さを合わせるためにしゃがみ込んだのである。
しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。