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妙な音

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 リオネの声に気づくとレイチェルは立ち上がって呼びかけた。

「おはようございます、リオネさん。どうかされましたか?」

 問いかけられるとリオネは少し困った表情を浮かべてからこう答える。

「えっと、私の気にし過ぎかもしれないのですが、クラノさんの部屋から妙な音が聞こえてきて」
「妙な音?」

 レインが首を傾げながら聞き返した。
 するとリオネは爪を立てるような仕草をしながら返答する。

「壁を引っ掻くような、ガリガリという音が響いてきたので、ドア越しに声をかけたのですが何も反応がなくって」
「もし眠っているだけだとしても妙な音は気になるね。少し様子を見にいってみるかい?」

 レインは立ち上がりながら優しく語りかけた。
 するとリオネは再び困ったようにこう話す。

「いえ、どうしても気になって扉を開けてみたのですが鍵がかかっていて」
「鍵?」

 そう反応したのはレイチェルだった。
 どうやら鍵という言葉に引っかかったらしい。それもそのはずだ。
 その理由をレイチェルが語る。

「確かに内側から鍵をかけられる部屋もこの屋敷にはあります。例えば客室に泊まっていただいている皆様のお部屋には鍵がついております。ですが、クラノ様は一人でもお泊まりいただいていた関係上、客室ではなく空いていたお部屋に宿泊してもらっています。ですので、クラノ様のお部屋には鍵はついていないはずですよ」

 そう言いながらレイチェルは首を傾げた。
 その言葉を聞くとリオネも同じように首を傾げる。

「え? それじゃあ、どうして扉が開かなかったのでしょう?」

 お互いに顔を見合わせるリオネとレイチェル。
 そんな二人の間に割り込むようにレオポルトが口を開いた。

「ここで話していても仕方あるまい。どうだ、何人かで様子を見にいこう。そうだな、気になっているはずのリオネとレイチェル殿についてきてもらおうか。レインとノエルはここに残り、伯爵が来られた時の説明を頼む」

 レオポルトがそう依頼するとレインとノエルは即座に了承する。

「ええ、わかったわ」
「何かあったらいつでも呼んでくれ」

 話が決まれば即行動。そんな信条を抱いているレオポルトはすぐにリオネとレイチェルを引き連れて大広間を出た。
 そのまま三人は倉野が宿泊している部屋に向かう。
 部屋の前までくると確かに中からガリガリと何かを引っ掻くような音が聞こえてきた。

「これか。確かに妙な音だな。おそらくだが、獣が爪を立てている音だろう」

 レオポルトがそう推察すると、レイチェルが扉に近づいてしゃがみ込む。何をするのかと思えば、扉に向かって優しく話し始めた。

「そこにいるのはツクネちゃんですか?」

 そう彼女はこの音を出しているのがツクネであると推測し、高さを合わせるためにしゃがみ込んだのである。
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