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連載
学者オレンジ
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けれど世界中の国の法律や現状を知らなければ『世界連盟』の規律など作れるわけがない。
主観だけで作った法に平等性など存在しないとレオポルトやノエルはわかっていた。
では、二人はどのようにして会議を続けたのだろう。それは第三者に監修を依頼することだった。
既にそう考えていたレオポルトは事前にグランダー伯爵に依頼し、世界中の法律や情勢に詳しい学者を紹介してもらっていたのである。
「だったら先に教えておいてよねって話じゃない?」
その時のことを思い出しながらノエルが言うとレオポルトは不適な笑みを浮かべた。
「いや、ワシが自己判断で第三者に監修させたのではお前さんと組んでいる意味がなくなるだろう。それでは当事者意識がなくなってしまうかもしれない。まずはお前さんと話し合い、共通の意見として第三者を介入させることを求めている必要があったということだ」
レオポルトが行動の意図を説明するとノエルは唇を尖らせて反論してみる。
「もし私が第三者の介入を求めなかったらどうするつもりだったの?」
「その時はまた別の方法を考えればいい。こうして決めていった意見は限りなく平等に近いだろう? 平和と平等は非なるものだが似ている。まぁ、盲目的に平等が正義だとは思わんが、少なくとも不平等は争いの種を産んでしまう」
そう語るレオポルト。
彼は獣人である。この世界において獣人は差別の対象であった。その根底には獣人は人間の成り損ないという風潮が存在する。
レオポルトもこれまで数多くの不平等を受けてきたはずだ。
経験上、不平等が争いを産むと知っていたのだろう。あらゆる戦いを体験してきた彼の言葉は重く、その場にいた全員を納得させるだけの説得力があった。
「そう言われればそうね」
そう答えたのはノエルである。これも彼女の良いところの一つだ。
納得できる意見であれば素直に受け止める。簡単なようで難しい。
ノエルを納得させたレオポルトはさらに話を進めた。
「グランダー伯爵に紹介してもらったのはこの国の学者、デュワール・オレンジ氏。先ほども言ったように世界中の法律や情勢に詳しい人物だ。そうですよね、伯爵」
レオポルトはあえて伯爵に話を振る。
自分の主観で話すよりもデュワールに詳しい伯爵が説明することで全員に伝わりやすいと考えたのだ。
話を振られた伯爵はグラスを置いて口を開く。
「ええ、デュワール氏は世界中の情勢を研究し、この国の防衛や発展に貢献してくれている学者です。どこかの国が戦争を起こそうとしている、新しい技術が開発された・・・・・・そんな情報を手に入れることでエスエ帝国は他国の行動から遅れずにいられると言っても過言ではないでしょう」
主観だけで作った法に平等性など存在しないとレオポルトやノエルはわかっていた。
では、二人はどのようにして会議を続けたのだろう。それは第三者に監修を依頼することだった。
既にそう考えていたレオポルトは事前にグランダー伯爵に依頼し、世界中の法律や情勢に詳しい学者を紹介してもらっていたのである。
「だったら先に教えておいてよねって話じゃない?」
その時のことを思い出しながらノエルが言うとレオポルトは不適な笑みを浮かべた。
「いや、ワシが自己判断で第三者に監修させたのではお前さんと組んでいる意味がなくなるだろう。それでは当事者意識がなくなってしまうかもしれない。まずはお前さんと話し合い、共通の意見として第三者を介入させることを求めている必要があったということだ」
レオポルトが行動の意図を説明するとノエルは唇を尖らせて反論してみる。
「もし私が第三者の介入を求めなかったらどうするつもりだったの?」
「その時はまた別の方法を考えればいい。こうして決めていった意見は限りなく平等に近いだろう? 平和と平等は非なるものだが似ている。まぁ、盲目的に平等が正義だとは思わんが、少なくとも不平等は争いの種を産んでしまう」
そう語るレオポルト。
彼は獣人である。この世界において獣人は差別の対象であった。その根底には獣人は人間の成り損ないという風潮が存在する。
レオポルトもこれまで数多くの不平等を受けてきたはずだ。
経験上、不平等が争いを産むと知っていたのだろう。あらゆる戦いを体験してきた彼の言葉は重く、その場にいた全員を納得させるだけの説得力があった。
「そう言われればそうね」
そう答えたのはノエルである。これも彼女の良いところの一つだ。
納得できる意見であれば素直に受け止める。簡単なようで難しい。
ノエルを納得させたレオポルトはさらに話を進めた。
「グランダー伯爵に紹介してもらったのはこの国の学者、デュワール・オレンジ氏。先ほども言ったように世界中の法律や情勢に詳しい人物だ。そうですよね、伯爵」
レオポルトはあえて伯爵に話を振る。
自分の主観で話すよりもデュワールに詳しい伯爵が説明することで全員に伝わりやすいと考えたのだ。
話を振られた伯爵はグラスを置いて口を開く。
「ええ、デュワール氏は世界中の情勢を研究し、この国の防衛や発展に貢献してくれている学者です。どこかの国が戦争を起こそうとしている、新しい技術が開発された・・・・・・そんな情報を手に入れることでエスエ帝国は他国の行動から遅れずにいられると言っても過言ではないでしょう」
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