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資金の目処

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 孤児や孤児院の現状を理解した倉野だったが、それが『ピース・リンク』の資金とどう繋がるのか。
 話の全容が見えない倉野はただ頷いている。
 もちろん伯爵もここまでの話で倉野にわかるわけがないと理解しているので説明を続けた。

「話が逸れてしまいましたが、世界中には親や家族を失い、生きる目的も場所も見つけられていない孤児が多いということ。孤児院を作ることが世界平和への礎となること。そして最も大切なのは孤児院は寄附によって運営することが珍しくないことです」
「なるほど?」

 再び頷く倉野。だが、まだ話の全容はわからない。しかし、寄附という言葉で資金の流れはなんとなくわかってきた。
 伯爵はさらに話を続ける。

「私や皇帝陛下が個人的に『ピース・リンク』に資金提供したのではエスエ帝国の影響が強くなる。他の国もそれを懸念してしまうでしょう。もちろん、匿名で『ピース・リンク』に資金提供するという方法もありますが、直接やりとりをしたのでは金の流れを掴まれてしまうかもしれない。もしかすると、『ピース。リンク』自体がエスエ帝国の策略ではないか、と疑う人間も出てくるでしょう。そこで孤児院を窓口にするのです。一度孤児院を介することで金の流れを追うことは難しくなるでしょう。それどころか『ピース・リンク』の名前は一躍世界中に広がっていく」

 そこまで聞いた倉野は資金洗浄みたいだな、と苦笑した。
 別に悪いことをしているわけではないが、金の流れを追わせないようにと考えれば資金洗浄にたどり着くのも不思議ではない。
 それどころか、足りていない孤児院が世界中に建てられるのであれば誰にとっても得しかないだろう。
 世界にとっても孤児にとっても『ピース・リンク』にとってもプラスしかない。
 話を理解した倉野は頷きながら口を開く。

「実質は伯爵やエスエ帝国からお金が出ていても、その方法であれば『ピース・リンク』への影響が少ないってことですね」
「ええ、その通りです。これによって資金の問題は無くなるでしょう?」

 伯爵が満足そうにそう言うとレイチェルが割り込むように口を挟んだ。

「お父様。満足そうですが話の本題はそこではありませんよ。その説明も必要でしたが、お話しされていたのは交渉役の人材でしょう?」

 レイチェルに指摘された伯爵は思い出したかのように話を続ける。
 資金の目処が立った伯爵は付き合いのある行商人や冒険者ギルドの幹部、様々な商人を集めて、世界中に孤児院を建てるという話を持って行った。
 資金や繋がりという点で考えるとグランダー伯爵家だけで孤児院を建てることは可能である。しかし、伯爵家だけが運営しているとなると周囲からどんな目で見られるかわからない。一度話を持って行ったという事実が大切であると伯爵は語った。
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