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実家の安心感

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 倉野たちを乗せたフォンガ車はアンゼロスを離れ、帝都に向かっていく。
 得たものは少なく失ったものは大きい。それでも前に進み続けるしかなかった。
 どの世界でも人生とはそういうものである。
 どんどんと日が暮れ、青と橙が空を二分した。やがて段々と黒に近づき、倉野たちはようやく帝都に辿り着く。
 一泊ほどで帰る予定が合計で四日ほど帝都を留守にしてしまっていた。
 帝都でも様々な物事が進んでいるだろうと倉野たちは急いでグランダー伯爵邸に向かう。
 たった四日離れていただけなのにその門構えがひどく懐かしく感じた。

「何だか懐かしく感じてしまいますね」

 倉野と同じ感想を抱くリオネ。
 途中、フォンガ車を返却していた倉野たちは徒歩で貴族街に入り、伯爵邸にたどり着いていた。
 大きく豪華な門をくぐりながらリオネの言葉を聞いた倉野は微笑む。

「そうですね。懐かしいですし、何だか安心します」

 この世界に自宅を持たない倉野にとってグランダー伯爵邸は実家のような場所だ。安心感を覚えるのも無理はない。
 門を越え庭園に挟まれた道の向こうでは豪邸の中から優しい灯りが漏れていた。それもまた安心感を覚える要因である。
 伯爵邸の敷地内を歩いていると屋敷の中からバタバタと足音が響いてきた。
 何だろうと思う暇もなく、屋敷の扉が開き誰かが飛び出してくる。

「クラノ様!」

 飛び出してきた彼女は勢いよく倉野に抱きついた。
 そう、飛び出してきたのはレイチェルである。
 
「レイチェルさん、どうして僕たちが帰ってきたと」

 倉野が驚きながら問いかけようとした。すると隣にいたレインが倉野の肩を叩き、屋敷の二階を指差す。

「レイチェル嬢の部屋はあそこだろう。彼女はずっと俺たちの帰りを待っていたのさ。多分ずっと・・・・・・な」

 そう言ってレインはレイチェルへの挨拶はせずに屋敷に向かっていった。
 同じようにリオネも倉野とレイチェルの横を通過する。

「おや、リオネはあの場面を放っておいていいのかい? てっきり妬くものかと思っていたが」

 歩きながら茶化すように話しかけるレイン。
 するとリオネは少し唇を尖らせながら答えた。

「仕方ないじゃないですか。四日もずっと待ってたレイチェルさんの邪魔はできませんよ。それに私はクラノさんとずっと一緒にいましたから・・・・・・今だけはいいんです」
「ははっ、リオネはいい女だよ。美しく気高い」
「レインさんはいつも少し意地悪です。お返しにノエルさんへ告げ口しますね。レインさんに口説かれたって」
「いや、それはやめてもらえないかな。本当に・・・・・・あの、リオネ? リオネさん? おーい、聞こえてるよね? ねぇ?」

 そう言いながらレインとリオネは屋敷の中に入っていく。
 残された倉野は少し戸惑いながらもレイチェルの腰に手を回した。

「すみません、心配させちゃいましたね」
「心配ならもう慣れました」

 そう言いながらレイチェルは少し潤んだ瞳を倉野に向ける。彼女の表情はこれ以上にないくらい嬉しそうだった。
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