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繋がりの名残

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 優しい言葉が倉野の心を包み込んでいった。
 その優しさに溺れるように倉野は再び眠りに落ちていく。
 戦いからまだ数時間ほどしか経過していない。一度目覚めはしたがまだ回復しきってはいないのだろう。

 次に倉野が目を覚ましたのは三日後のことだった。
 ふかふかのベッドの上でゆっくりと穏やかに目を覚ます。
 身体中の疲れが癒え、高級マッサージでも受けたかのように体に軽い。
 倉野は状態を起こし、周辺を確認した。
 どこかの一室であることがわかり、状況的にオネットさんの家ではないかと推測する。
 おそらく来客用の部屋なのだろう。ベッドと小さな机、椅子だけが置いてある質素な部屋だった。
 窓からは柔らかな光が差し込み、扉の向こう側から何人かの足音が聞こえる。
 
「んん・・・・・・よく寝た気するな」

 倉野がそう呟くと枕元に置いてあった自分の鞄からツクネが眠そうにのそのそと這い出てきた。

「クー?」
「ツクネ、お前も寝ていたのか。ははっ、まだ眠そうだな。もう少し寝ててもいいんだよ」

 倉野がそう話しかけるとツクネは寝ぼけ眼のまま倉野の膝に乗る。

「ククク」

 どうやら甘えたいらしい。
 そこで倉野は、そうかと気づく。どれくらい眠っていたかはまだわからないが、日を跨ぐほど眠っていたのだ。ツクネなりに心配してくれていたのだろう。
 ツクネの気持ちを察した倉野は優しく撫でてから話しかけた。

「いつもありがとう、ツクネ。今回もツクネのおかげで助かったよ」
「クク!」

 ツクネは満足そうに喉を鳴らす。
 デザストルとの戦いに置いて倉野は死と直面した瞬間があった。そんな倉野を救ったのは間違いなくツクネである。
 満足そうにしていたツクネはふと思い出したかのように倉野の右肩にしがみ付き、愛でるように頬を擦り付けた。

「どうした、ツクネ。右肩に何か・・・・・・」

 そこまで言ってから倉野は思い出す。
 イスベルグと契約した時、倉野の右肩にはドラゴンをイメージした紋章が刻み込まれていた。わかりやすく言うならば契約紋のようなものだろう。
 倉野とイスベルグのつながりを可視化したものでもあった。
 ツクネの行動によって思い出した倉野は即座に服を捲り上げ、紋章を確認する。
 しかし、そこには何も残っておらず、傷ひとつない自分に肌が見えた。
 もうどこにもイスベルグの痕跡は残っていない。
 けれどツクネは紋章があった箇所にしがみ付いていた。

「お前にはわかるんだね、ツクネ。そうだよ・・・・・・僕たちは一人と一体と一匹でいつだって繋がっているよ。僕の中には残っているよイスベルグさんとの誓いが。改めて傍観者でいるわけにはいかない」
「ククク!」
「じゃあ、外に出てみようか。お腹も空いたしね」

 倉野がそう言うとツクネは鞄の中から自分が蓄えていたであろう干し肉を出してくる。

「ククー」

 どうやら倉野にくれるらしい。お腹が空いているという倉野の感情を読み取ったのだ。
 倉野はなんだかおかしくなって笑う。

「ははっ、ありがとうツクネ。けどそれはお前のものだよ。気持ちだけもらうよ」
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