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生きているからこそ

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 その柔らかな温かさに浸る倉野。
 するとリオネが抱擁していることに気づかずレインが歩み寄りながら話しかけてきた。

「起きたのかい、クラノ。確認したいことが・・・・・・って、あ、すまない!」

 倉野を抱きしめるリオネに気づき、レインは慌てて顔を背ける。
 その声に気づいたリオネは急いで倉野から離れ顔を真っ赤にした。
 突然、支えを失った倉野は体のバランスを保ちながらレインに返事をする。

「おっとっと。どうしたんですか、レインさん」
「いや、邪魔したようですまない。少し確認したいことがあっただけなんだ」
「確認?」

 倉野が聞き返すとレインはデザストルの亡骸を指差して話を続けた。

「厄災の亡骸についてさ。今、アルダリンさんやオネットさんたちはあの亡骸の運搬について話し合っている。ずっとあのままってわけにはいかないからな。その上、あれだけのドラゴンだ。素材にはどれも高値が付くはずさ。もちろん権利は討伐者であるクラノが持っている。しかし、アンゼロスにはこれだけの被害が出た」

 そう言いながらレインは両手を左右に伸ばし、自分の背後を見せるように立つ。
 倒壊した建物と焼け焦げた大地。分かってはいたが悲惨な光景だ。
 レインが言わんとしていることは倉野にも伝わる。
 それを理解した上で倉野は頷いた。

「大丈夫ですよ、レインさん。僕はレインさんを信頼しています。もちろんリオネさんやアルダリンさん。今回協力してくださったオネットさんのことも・・・・・・いちいち僕の許可は要りません。一番いい方法を選んでください」
「そうか。アルダリンさんたちにはそう伝えよう」

 レインは安心したようにそう答える。
 今残っているものはイスベルグでもデザストルでもない。厄災の亡骸だ。そこに温情を抱いても仕方がない。イスベルグが生きていれば合理的に利用しろと言うはずだ。
 倉野はそう考え、アンゼロス復興のために厄災の亡骸を使うことを願った。
 倉野の答えを聞いたレインは急いでアルダリンたちの元に向かおうする。しかし、その瞬間倉野はイスベルグの最後の言葉を思い出して彼を呼び止めた。

「あ、レインさん!」
「ん、なんだい?」
「高価なものじゃなくていいので、厄災の亡骸だとわかるもの・・・・・・厄災が死んだのだとわかる何かを僕にくれませんか?」
「厄災の亡骸だとわかるもの・・・・・・ああ、分かった。その分野に詳しいのはオネットさんだろう。それも伝えておくよ」

 倉野の願いを聞き入れるとレインはアルダリンたちの元へ向かっていく。
 慌ただしく目の前で働く人々。焼け焦げた悲惨な光景。
 思わず倉野はこう呟いた。

「被害は大きいな・・・・・・」

 すると今度はリオネが倉野の方に頭を預けて答える。

「それでもアンゼロスの人たちは全員生きています。クラノさんのおかげですよ。生きているからこそこの光景を嘆き、汗を流して動き、苦労する。生きているからこそ、未来に向けて行動できるんです。クラノさんの努力の結果です」
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