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繋がり、貫き

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 イスベルグの意思を確かに感じた倉野はそう呟き、クレアシオンを構える。
 至近距離かつ体の動かない無防備な状況で剣を構えられたデザストルは心の奥底から焦燥感が押し寄せてきた。

「なんなんだよこれ!」

 焦りのまま言葉を吐き捨てる。
 しかし、既にその体の主導権はイスベルグが握っていた。
 デザストルの口からイスベルグの声が響く。

「言ったはずだ、デザストル。お前を殺すのはお前自身の『侮り』だとな。私はお前に取り込まれたのではない、自分の体を犠牲にしてお前に入り込んだ」

 するとデザストルは自分の口から出た言葉に言い返した。

「ふざけるな! 俺様の体を返せ!」
「様々なものを奪ってきたお前が最後に全てを失った・・・・・・因果応報という言葉を知らないのか」
「黙れ! お前は俺様に負けたんだ。敗者は黙って消えろ!」
「私は負けたのではない。繋いだんだ・・・・・・なぁ、クラノ!」

 イスベルグはデザストルの中から倉野の名前を呼ぶ。
 これは合図だ。
 イスベルグに名前を呼ばれた時、クレアシオンで貫くようにと倉野は指示されている。今がその時だった。
 倉野がデザストルの上体を見上げ、狙いを定める。
 するとイスベルグはデザストルの体を動かし、左胸を指し示した。

「ここだ。迷わずにここを貫け!」

 示された場所は倉野からすると高層ビルほどの高さにある。
 ジャンプで届くような距離ではなかった。
 魔法を持たぬ倉野が飛ぶためにはつくねの協力が不可欠。ツクネに話しかけようとした瞬間、倉野よりも先にイスベルグが言葉を放った。

「小さき同志・・・・・・いや、ツクネ。クラノを頼んだぞ」

 イスベルグの言葉を聞いたツクネは勇敢な顔付きで頷く。

「クク!」

 その言葉には二つの意味があった。
 風魔法で倉野を浮かせて攻撃に協力せよ、という意味。
 もう一つは自分がいなくなった後の倉野を魔法で支えてほしい、という意味だ。
 その全てを感じ取り、ツクネは頷いたのである。
 イスベルグから思いを託されたツクネは即座に風魔法を発動し倉野を浮かせた。
 風を纏い弾丸のような速度でデザストルの左胸に向かう倉野。
 体を動かすこともできず、魔法の発動もままならないデザストルは声に焦燥を乗せて叫ぶ。

「やめろ! 下等生物の分際で!」

 デザストルの言葉に答えるのは倉野ではなくイスベルグだ。

「これはお前が捨てた『繋がり』だ」
「黙れ! 俺様の方が強いはずだ! 負けるわけがないんだ!」
「お前は負けたんだ、デザストル。ドラゴンであることを誇るのならば、潔くこの世を去れ」
「うるせぇ消えろ! イスベルグ!」

 同じ口を介して言い合うイスベルグとデザストル。
 しかし、もう倉野は止まらない。
 その勢いのまま倉野はデザストルの左胸、心臓の位置にクレアシオンを突き刺した。
 クレアシオン自体の攻撃力、倉野のスキル『剛腕』、ツクネの風魔法。その全てがデザストルの左胸を襲う。
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