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繋がる言葉

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「うっ・・・・・・イスベルグさん・・・・・・」

 最後の一瞬に名前を呼ぶ倉野。
 本当にこれでよかったのか、と自分に問いかける。心の中に大きな穴が開いてしまったかのように悲しみが押し寄せてきた。
 自分でも制御しきれず、倉野の頬に涙が伝う。
 鞄の中からツクネが心配そうに見上げているのが見えた。
 
「クー?」
「ごめん、ツクネ。大丈夫・・・・・・大丈夫だから。イスベルグさんとの誓いは忘れてないよ。それにイスベルグさんは嘘をつくような性格じゃない・・・・・・必ず名前を呼んでくれるよ。僕は信じてる」

 倉野がそう答える。
 まだ終わっていないはずだ、と自分に言い聞かせ倉野はデザストルを睨みつけた。
 倉野に気づいたデザストルは、周囲を飛び回る虫でも見るような視線を彼に向ける。

「まだお前が残っていたなぁ。イスベルグが命をかけて守った下等生物。お前にどれほどの価値があるのか、俺様に見せてみろよ。まぁ、イスベルグが殺されても動けねぇ腰抜けにできることなんてあるわけねぇけどな」

 デザストルは全てを嘲笑うようにそう言い放つ。
 イスベルグの思いも倉野の覚悟も愚弄する言葉だ。強さだけを追い求めてきたデザストルに、自らの命を投げ捨てて戦うよりも奥歯を噛み締め耐えることが辛いなんて理解できるはずもない。
 しかし、イスベルグが消えた今、戦えるのは倉野だけだ。
 倉野は必死に鼓動を抑え冷静さを保って言葉を放つ。

「そんな安い挑発には乗らないよ。イスベルグさんはまだ・・・・・・負けてない!」
「はっ、何言ってやがる。イスベルグは負けたんだ。やつも言ってやがっただろう。ドラゴンは敗者を喰らい血肉にすることで勝利とする。裏を返せば俺様に取り込まれたイスベルグはもう負けてんだよぉ。やつは俺様の一部になったんだ」

 不気味な笑みを浮かべながら言い放ったデザストルの言葉は倉野にある発想を植え付けた。
 デザストルの言う一部になった言葉、つまりイスベルグはデザストルの中にいることになる。
 もしも、この一連の流れが全てイスベルグの想定通りだとすれば。
 イスベルグを自分の中に取り込んでいた倉野だからこそわかることだった。
 デザストルと戦うことが決まってからのイスベルグの言葉が全て繋がっていく。
 別れの言葉、返り血を浴びてでも生きろという言葉、今は出番ではないという言葉。そして私を殺してでも世界を救えという言葉。その全てがつながり、一つの確信になった。

「イスベルグさんは・・・・・・デザストルの中に?」
「ああ? 何言ってやがる。俺様がそう言ってるだろうが。イスベルグの力は全て俺様が取り込んだ。もう人間風情を守るものは何もねぇってことだ!」

 倉野の言葉に答えるデザストル。
 しかし、倉野が話しかけているのはデザストルではなかった。

「そうだったんですね、イスベルグさん・・・・・・僕にそうしろと・・・・・・」
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