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もう一人の相棒

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 何が起きているんだ。スキルを発動しなければ。どう動くのが適切なのか。どこまで回避すれば良いのか。
 倉野の頭は考えなければならないことで渋滞し、一瞬の停止を生んだ。
 先ほどのデザストルがその一瞬でイスベルグの『戦々氷々』発動を許したように、この停止が倉野の命を奪おうとしている。
 結局動くことができず、爆発の火炎が彼の鼻先に触れようかという寸前。
 倉野は後方へと吹き飛ばされ、突然の衝撃に驚きの声を漏らした。

「え!?」

 風を切るように猛スピードで後方に飛んでいく倉野。
 もちろん自ら後方に飛んだわけではない。体は中に浮かび、弾丸のように後退していた。
 しかし、そのおかげで爆発に巻き込まれずに済み九死に一生を得たのである。
 一瞬の驚愕を経て冷静さを取り戻した倉野は弾丸になったかのような動きに覚えがあり、心当たりに視線を送った。
 肩から掛けている鞄の中で眠っていたはずのツクネである。

「ツクネ!」

 風魔法を使いこなす魔物フェレッタであるツクネが鞄から顔を出し、何かに力を込めるような表情を浮かべていた。

「ククッ!」

 そこでようやく倉野は自分がツクネに助けられたのだと確信する。

「ありがとう、ツクネ。風魔法で爆発から回避してくれたんだな。助かったよ」

 倉野が礼を言うとツクネは満足そうに鳴き声をあげて、魔法を解除した。
 その瞬間に着地した倉野は移動の余韻でズザザザと後方に流され停止する。
 元いた『センター』からアンゼロス南門へと向かう道の途中で停止した倉野が前方を確認すると、爆発は随分手前で終わっていた。
 上空ではイスベルグが倉野の無事を確認して、再びデザストルを睨み付ける。
 すると、そこでイスベルグは強烈な違和感を覚えた。

「な・・・・・・まさか、デザストル・・・・・・貴様」

 イスベルグの目に映ったのはひび割れるデザストルの体表である。
 ピシピシと音を立てて体表が割れていき、脱皮するかのように新たな体表が姿を現した。
 乾き始めた血液のような黒に近い赤。おどろおどろしい色がデザストルの不気味さに拍車をかける。

「下等生物を気にかけていたなぁ・・・・・・あの人間がそんなに大切かぁ、イスベルグ!」

 地の底から響くような声で見上げて叫ぶデザストル。
 だが、イスベルグはあえて答えずに話を変えた。

「そんなことよりも、その姿は何だデザストル。私の知らぬ姿だが・・・・・・」
「七百年間意味もなく死んでたと思ってんのかゴミ! 俺様は憎しみや痛みを力に変える術を得たぁ! この土地には数々の下等生物どもが平穏を夢見る建物が並んでやがる。分かるか? 破壊すればするほど俺様はさらに至高へと近づく!」
「いよいよ異形へと身を落としたらしいな。とことん価値観が合わん」
「テメェと合わせてぇとも思ってねぇよ! 強さこそが全てだ。例え全てを踏みつけてもなぁ!」
「破壊で得られる力など明らかに有限だろう。全てを破壊尽くし、遂には自らの身を破壊する。ふっ、良い結末だな」
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