472 / 729
連載
もう一人の相棒
しおりを挟む
何が起きているんだ。スキルを発動しなければ。どう動くのが適切なのか。どこまで回避すれば良いのか。
倉野の頭は考えなければならないことで渋滞し、一瞬の停止を生んだ。
先ほどのデザストルがその一瞬でイスベルグの『戦々氷々』発動を許したように、この停止が倉野の命を奪おうとしている。
結局動くことができず、爆発の火炎が彼の鼻先に触れようかという寸前。
倉野は後方へと吹き飛ばされ、突然の衝撃に驚きの声を漏らした。
「え!?」
風を切るように猛スピードで後方に飛んでいく倉野。
もちろん自ら後方に飛んだわけではない。体は中に浮かび、弾丸のように後退していた。
しかし、そのおかげで爆発に巻き込まれずに済み九死に一生を得たのである。
一瞬の驚愕を経て冷静さを取り戻した倉野は弾丸になったかのような動きに覚えがあり、心当たりに視線を送った。
肩から掛けている鞄の中で眠っていたはずのツクネである。
「ツクネ!」
風魔法を使いこなす魔物フェレッタであるツクネが鞄から顔を出し、何かに力を込めるような表情を浮かべていた。
「ククッ!」
そこでようやく倉野は自分がツクネに助けられたのだと確信する。
「ありがとう、ツクネ。風魔法で爆発から回避してくれたんだな。助かったよ」
倉野が礼を言うとツクネは満足そうに鳴き声をあげて、魔法を解除した。
その瞬間に着地した倉野は移動の余韻でズザザザと後方に流され停止する。
元いた『センター』からアンゼロス南門へと向かう道の途中で停止した倉野が前方を確認すると、爆発は随分手前で終わっていた。
上空ではイスベルグが倉野の無事を確認して、再びデザストルを睨み付ける。
すると、そこでイスベルグは強烈な違和感を覚えた。
「な・・・・・・まさか、デザストル・・・・・・貴様」
イスベルグの目に映ったのはひび割れるデザストルの体表である。
ピシピシと音を立てて体表が割れていき、脱皮するかのように新たな体表が姿を現した。
乾き始めた血液のような黒に近い赤。おどろおどろしい色がデザストルの不気味さに拍車をかける。
「下等生物を気にかけていたなぁ・・・・・・あの人間がそんなに大切かぁ、イスベルグ!」
地の底から響くような声で見上げて叫ぶデザストル。
だが、イスベルグはあえて答えずに話を変えた。
「そんなことよりも、その姿は何だデザストル。私の知らぬ姿だが・・・・・・」
「七百年間意味もなく死んでたと思ってんのかゴミ! 俺様は憎しみや痛みを力に変える術を得たぁ! この土地には数々の下等生物どもが平穏を夢見る建物が並んでやがる。分かるか? 破壊すればするほど俺様はさらに至高へと近づく!」
「いよいよ異形へと身を落としたらしいな。とことん価値観が合わん」
「テメェと合わせてぇとも思ってねぇよ! 強さこそが全てだ。例え全てを踏みつけてもなぁ!」
「破壊で得られる力など明らかに有限だろう。全てを破壊尽くし、遂には自らの身を破壊する。ふっ、良い結末だな」
倉野の頭は考えなければならないことで渋滞し、一瞬の停止を生んだ。
先ほどのデザストルがその一瞬でイスベルグの『戦々氷々』発動を許したように、この停止が倉野の命を奪おうとしている。
結局動くことができず、爆発の火炎が彼の鼻先に触れようかという寸前。
倉野は後方へと吹き飛ばされ、突然の衝撃に驚きの声を漏らした。
「え!?」
風を切るように猛スピードで後方に飛んでいく倉野。
もちろん自ら後方に飛んだわけではない。体は中に浮かび、弾丸のように後退していた。
しかし、そのおかげで爆発に巻き込まれずに済み九死に一生を得たのである。
一瞬の驚愕を経て冷静さを取り戻した倉野は弾丸になったかのような動きに覚えがあり、心当たりに視線を送った。
肩から掛けている鞄の中で眠っていたはずのツクネである。
「ツクネ!」
風魔法を使いこなす魔物フェレッタであるツクネが鞄から顔を出し、何かに力を込めるような表情を浮かべていた。
「ククッ!」
そこでようやく倉野は自分がツクネに助けられたのだと確信する。
「ありがとう、ツクネ。風魔法で爆発から回避してくれたんだな。助かったよ」
倉野が礼を言うとツクネは満足そうに鳴き声をあげて、魔法を解除した。
その瞬間に着地した倉野は移動の余韻でズザザザと後方に流され停止する。
元いた『センター』からアンゼロス南門へと向かう道の途中で停止した倉野が前方を確認すると、爆発は随分手前で終わっていた。
上空ではイスベルグが倉野の無事を確認して、再びデザストルを睨み付ける。
すると、そこでイスベルグは強烈な違和感を覚えた。
「な・・・・・・まさか、デザストル・・・・・・貴様」
イスベルグの目に映ったのはひび割れるデザストルの体表である。
ピシピシと音を立てて体表が割れていき、脱皮するかのように新たな体表が姿を現した。
乾き始めた血液のような黒に近い赤。おどろおどろしい色がデザストルの不気味さに拍車をかける。
「下等生物を気にかけていたなぁ・・・・・・あの人間がそんなに大切かぁ、イスベルグ!」
地の底から響くような声で見上げて叫ぶデザストル。
だが、イスベルグはあえて答えずに話を変えた。
「そんなことよりも、その姿は何だデザストル。私の知らぬ姿だが・・・・・・」
「七百年間意味もなく死んでたと思ってんのかゴミ! 俺様は憎しみや痛みを力に変える術を得たぁ! この土地には数々の下等生物どもが平穏を夢見る建物が並んでやがる。分かるか? 破壊すればするほど俺様はさらに至高へと近づく!」
「いよいよ異形へと身を落としたらしいな。とことん価値観が合わん」
「テメェと合わせてぇとも思ってねぇよ! 強さこそが全てだ。例え全てを踏みつけてもなぁ!」
「破壊で得られる力など明らかに有限だろう。全てを破壊尽くし、遂には自らの身を破壊する。ふっ、良い結末だな」
0
お気に入りに追加
2,845
あなたにおすすめの小説
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。