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戦々氷々と炎帝閻魔

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 しかし、下から見上げている倉野は発動された魔法をはっきりと捉えている。

「これが天空の支配者・・・・・・ドラゴン」

 呟く倉野の目に映っていたのは冷気で真っ白に染まる空だった。
 デザストルよりもさらに上空が冷気で満ちていく。
 しかしイスベルグと向かい合っているデザストルはその光景に気づいていない。

「何をしやがったぁ!」

 魔法の詠唱を聞いた上でその正体を掴んでいないデザストルは一気に困惑する。
 イスベルグはまるで相手に同情するかのような表情で言葉を返した。

「翼を持つ強者だから天空の支配者だと思っているのか? 否。文字通り天空を支配するのだ。見上げてみろ・・・・・・もう手遅れだがな」

 その言葉が合図だったかのようにデザストルは頭上を見上げる。
 それと同時に空から無数の尖った氷柱が降り注いだ。
 どう考えても回避不能な速度で降り注ぐ氷柱は、デザストルが声をあげる間もなくその漆黒の体表に突き刺さっていく。
 高速すぎるリズムで執拗なまでに突き刺さっていく氷柱は、漆黒の体表を白に染め君臨していたデザストルを地面に叩き落とした。
 ズドンという鈍い音を響かせて地面に押し当てられたデザストルは周囲の建物を下敷きにして横たわる。
 落下地点は『センター』から少し西にずれており倉野が受けたのは巨体落下の風圧だけだった。
 しかしその光景の壮大さに言葉を失う。

「・・・・・・」

 舞い上がる土埃、響いた音の余韻、途轍もない緊張感がその場の空気を支配した。
 もう動かないでくれ。言葉のでない倉野はそれだけを願う。
 だが、ふと上空を見上げるとイスベルグの表情から緊張感が消えていないことに気づいた。
 まだ終わっていないと倉野は直感で理解する。
 その瞬間、地面に叩きつけられたデザストルが咆哮した。

「グアアアアアアアアァァァァァ! 許さねぇ許さねぇ! テメェだけは絶対に殺してやる!」

 顔から体、両翼まで氷柱が突き刺さっている状態で立ち上がったデザストルは更なる怒りを燃やす。
 その様子を上から見ていたイスベルグは魔力の動きを察知し、慌てて口を開いた。

「クラノ! 今すぐその場を離れろ!」

 突然の指示に倉野は困惑する。

「え?」

 しかし、もう既にイスベルグが危惧した事態は起き始めていた。

「全てを消し炭にしてやるぜ! 炎帝閻魔・爆発連鎖の段!」

 デザストルが詠唱した瞬間、その体が爆発したと錯覚するかのような出力の炎を放つ。そして文字通り連鎖的にその爆発が周辺に広がり始めた。
 デザストルの場所から円を描くように広がる爆発は建物を吹き飛ばし空間を燃やし、焦げ臭い更地にしていく。
 もちろん、その爆発は猛スピードで少し離れていた倉野に襲いかかった。

「クラノ!」

 再び上空から声をかけるイスベルグだったが、突然の窮地にただ驚くばかりの倉野には届かない。
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